どうも、こんにちは!e☆イヤホン スタッフ(in秋葉原)の、ののです!

 

 

先月まで大阪の店舗で働いていましたが、秋葉原のオフィスに転勤しました。ですのでバナーも(まるで東京に魂を売ったとでも言わんばかりの内容に)変更です。

 

僕は今オフィスでデータベースを作る仕事をしています。e☆イヤホンはポータブルオーディオ専門店ですから、別に隠さずともそのデータベースの内容は当然ポータブルオーディオ(イヤホンなど)にまつわる内容ですね。この仕事をしていると、使いやすーい、みんなの役に立つデータベースを作るため、様々な商品のスペックに改めて目を通すこともあるのですが、とりわけデジタルオーディオプレイヤー(DAP)はまぁいろいろ項目が多くて手のかかるジャンルだと思わせられます。

 

僕は先月まで店頭の販売員だったのでプレイヤーのスペック項目が意味する基本的なことの意味はおおよそわかるのですが、極論すると「ただ音を聴きたい」だけなのにこれだけ様々なスペックについて理解して製品を選ぶっていうのも、取っつきづらいことだなと。

 

 

そこで!ケイティ(eear_katy)がソロ活動していた【DAPの良さを広め隊】に僕も勝手に入隊しました。DAPのスペックについて、少しずつながらきちんと(なおかつわかりやすく)説明できる機会を設けられたらなと考え、この記事を書いております。

 

【DAPの良さを広め隊】DAPって…何???編

 

 

で、今回のお題を何にしようかと迷い、いろいろ考えたのですが…。

 

今回はどのDAPにもスペックとして載っているにもかかわらず、実はしっかりと説明される機会があまり無い子、

 

DAC(ダック / ディーエーシー)

 

の話をしたいと思います。duckじゃないですよ?「DAC」です。

 

このDACという言葉は、音質にこだわっている音楽プレイヤー製品のスペックにはかなりの頻度で登場する単語です。プレイヤー選びの際に、スペックの一つとして意味がわかるようになりますので、是非押さえておきたいですね!

 

 

そもそも「DAC」とは?

 

DACとは、

 

Digital to Analog Converter」(デジタル トゥ アナログ コンバーター)

 

の略称です。「デジタルからアナログに変換する回路」という意味ですね。

 

表記方法には、

DAC

DACチップ

D/Aコンバーター

D/A変換

デジタルアナログ変換回路

など、様々な書き方があり、媒体によって表記揺れも激しい用語です。

 

オーディオ以外の電子機器にもこの概念がありますが、今回はオーディオ機器に内蔵されているパーツとして知られる「DACチップ」に限定して説明していきます。また、表記方法については、「デジタル信号をアナログ信号に変換する回路そのもの」はDAC、「デジタル信号をアナログ信号に変換するDACの機能」はD/A変換と表記を区別することにします。

 


 

さて、皆様が日頃から使用されるようなイヤホンやヘッドホン、スピーカーは、アナログ信号で音を鳴らす仕組みになっています。ところが、DAPのストレージに皆さんが記録している音楽データというのは、「デジタルミュージックプレイヤー(DAP)」の名の通り、アナログ信号ではなくデジタル信号です。デジタル形式で記録されている音楽データを再生するためには、これをアナログの電気信号に変換する必要があります。そこで、信号を「デジタルからアナログに変換する回路」、いわばDACが重要な役割を果たすわけですね。そのため、デジタルミュージックプレイヤー(DAP)の心臓部と表現しても過言ではないわけです。

 

「DAC」と「DAP」は字面が似ているので混同しそうになってしまいますが、全く違う意味なので注意してください。

 

このDACを通してデジタル信号がアナログ信号に変換されたあとは、アンプなどを通して増幅され、イヤホンやヘッドホンを鳴らすための電流となります。DACで変換されたままでは信号が小さいためですね。このため、「DAC」→「アンプ」という流れは基本的にセットで考えていただければ問題ありません。大型の据え置きのシステム用のものだと、「D/A変換」だけを専門的に担う機器も存在していて、そういった製品をアンプに対して「DAC」と呼ぶ場合があるので、初心者の方からするとかなりややこしいかもしれません。どちらにせよ、デジタル信号をアナログ信号に変換している回路であるのには変わりません。

 

音楽プレイヤーの中での基本的な信号の流れ。ちなみにプレイヤーに限らず、Bluetoothを通して音楽データを受け取るワイヤレスイヤホンも、PCからUSBで繋いでいるアクティブスピーカーも、大体こういう原理で音を鳴らしています。皆様の身近にある「音の出る製品」の基本です。(正確にはDACの前部に信号を適切に処理する「DSP」という回路がありますが、話を単純にするため図では省略します)

 

 

「DAC」の性能は音に関係する?

 

結論から言うと、大いに関係があります

 

決してDACだけで優劣が決定するわけではありませんが、音楽プレイヤーの音質的なスペックを見る際に一つの指標として用いられることが多いようです。「このプレイヤーはどのDACチップを使っていますか?」という問い合わせをお客様からよく受けるほどなので、僕もプレイヤーの新製品が発表された際には真っ先にチェックします。そのくらいには音質に関係してきます。

 

なぜ、デジタル形式からアナログ形式に信号を変換するだけなのに音の違いが出るのかということを説明したいのですが、それにはまず「デジタル」と「アナログ」の違いについて理解が必要なので、順を追って説明していきます。

 

 

「デジタル」と「アナログ」の違いって?

 

皆さんはデジタルとアナログの違いを何となくでも把握していらっしゃいますでしょうか。日常生活においては「デジタル時計」と「アナログ時計」という単語をよく聞くかと思います。

 

デジタルとアナログは、どの辞書にも載っているような難しい言い方をするとだいたい以下のような表現で分類できます。

 


 

デジタル:離散量

…特定の量を、それ以上分割することができない「最小量」が存在する量で表したもの。

 

アナログ:連続量

…連続している、あるいは連続して変化し続ける量を、別の連続した量で表したもの。

 


 

とはいえ、いきなりこんな言い方されてもわかりにくいと思いますので…。先ほどの「時計」の例で説明いたします。

 

最初に、「量(りょう)」とは測定が可能なもので、大小などの差の比較が可能なものを表します。数量とか重量とかの「量」です。

 

アナログの時計は「時間」という連続した量を、針の「角度」で表しますよね?時計の針はゆっくりと一定のスピードで回り続けるので、この動きは「連続的」です。針が「はい、次この角度。」と別の角度にいきなり瞬間移動することはありません。「1時1分」と「1時2分」の間の角度というのもちゃーんとあるわけですね。

 

アナログ時計の画面です。スマートフォンの画面なので処理自体はデジタルですが、針は連続的に変化を続けているので実質的な表示上は「連続量」、つまりアナログの形式の時計と言えます。(アプリ「Desk Clock」)

 

それに対して、デジタルの時計は「時間」という連続して変化する量を、「数字」という飛び飛びの量で表します。このため、下のスマートフォンの画像のような時計だと、時計の表示上は「1時1分」と「1時2分」の間がありません。1時2分になるときは、1時1分という表示から突然1時2分に切り替わります。つまり「~分」というそれ以上分割できない最小単位で表しています。これが「1時1分10秒」と「1時1分11秒」のように秒単位で表示されていたとしても、その時計では「秒」が最小量なのでそれ以上分割して扱うことはできませんよね。このような表現を「離散的である」といいます。

 

iPhoneのロック画面の時計です。時間を「数字」という離散的な量でのみ表しているため、これはデジタルの表示形式の時計と言えます。

 

コンピュータが処理するデータはデジタルの形式で、全て「0」と「1」の2つの数字のみで記録されています。「0と1の間」はありません。なぜそうなっているかというと、有るか無いかのスイッチングのみで「量」を表現するのが最もシンプル、かつ正確で、高速の計算を行えるためです。コンピュータ用語では、この「0」と「1」で表した量を「1bit(ビット)」という単位で扱います。

 

 

では、今度は「音」はどうなのかというと、音というのは空気などを通した「振動」なので、飛び飛びのものではなく連続して変化するものです。つまり音という現象はアナログ(連続量)です。これを一旦取り扱いやすいデジタル情報に変換して「音楽データ」としてDAPに格納しておき、我々がイヤホンなどで音楽を聴くときにはまたアナログの情報をもった電気信号に変換してイヤホンジャックからイヤホンに伝送する、というのがDAPの仕組みです。

 

逆に、「アナログ原理での音楽の記録方式」にはレコードが代表として挙げられます。レコードプレイヤーの針がレコードの表面にある溝をたどり続け、その深さの違いを物理的に読み取って音の信号を発電しているので、連続的な量を読み取っている(=アナログである)と言えるのです。このため、レコードプレイヤーにはDACは不要です。

 

 

しかし、アナログ方式であるレコードの「溝を掘る」という物理的な行為での記録方式を元にした再生方法では、様々な誤差が生じてしまう(=記録されたデータの再現度にバラつきがあり、劣化が大きい)ので、「0」か「1」のどっちかでしか表現しないデジタルでの記録形式のほうが再現性や信頼性が高く、現代の音楽の記録方式はたいていデジタル方式になっています。

 

※レコードの音を「魅力的だ」「良い音だ」などと感じられるのは、「再現性」とはまた別の特性によるものなので、今回はその話に関しては一旦置いておきます。

 

図の縦軸は信号の大小、横軸は時間を表します。デジタルはアナログと違って「量」が”離散”しているため、多少信号に雑音があったとしても、それが過大でなければ信号を正しく復元することができます。また、過大であっても、0と1の単純なデータなのである程度は誤りの訂正が可能です。このことから、デジタル形式は信号の再現性が高いと言えます。

 

 

このように、アナログとデジタルには根本的な考え方や仕組みの違いがあります。

 

 

デジタル信号を完璧な形でアナログ信号に復元することはできない!?

 

ここから、「DACの性能が音に関係する」という話の本題に入っていきます。

 

デジタル信号をアナログ信号に変換する際、入力された元の信号を100%完璧な状態で復元することはできません。これははっきりしているので言い切ってしまいます。現実にそのようなシステムは存在できません

 

なぜかというと、「離散量(=飛び飛びの数値)であるデジタル信号を、連続量(=全て続いている)であるアナログ信号に変換」しているためです。この違いを目で見てわかりやすくした図が下のものです。

 

アナログである「音」をそのまま波形で表したものです。ずっと線で繋がり、連続的に変化しているので「連続量」と言えます。ちなみにこの波形を「正弦波」といいます。

アナログ信号を「離散量」であるデジタル信号で表したものです。遠目には点と点が連なって波形に見えますが、実際にはただの点の並びで、その間はありません。図のように、もともと連続量だったものを離散量にすることを「量子化」といいます。

 

正弦波の形をとるアナログ信号に対して、デジタル信号はそれぞれの値(画像の赤い点)が「離散」しているため、その間がありません。このデジタル信号を、正弦波の形をとるアナログ信号に戻すとき、ご覧のように「間」がなかったものに「間」を加えることになるので、その戻し方によって正弦波の形が変わってきてしまいます(厳密に突き詰めると少し違う説明になるのですが、この言い方のほうが初心者の方には伝わりやすいかと思います)。このデジタルとアナログの違いによる誤差の部分は、音を再生する時に「ノイズ」として混ざってきます。

 

そのノイズをなるべく感じさせないようにするために、音楽プレイヤーに搭載されているDACはいろんな技術を使ってそこんところをうまくやりくりして変換しています。そして、そのやり方が各社によって違います。これがDACによる基本的な音の違いの要素の一つになるわけですね。

 

もっとも、皆さんがよく聞かれるCDは人間の基本的な可聴帯域はしっかりと再現性が確保できるようにサンプリングされています。このため、それぞれのDACの音がめちゃくちゃ違うというわけではありません。微妙な音の個性の違いはあれど、基本的に原音の再現性そのものは高く保たれています。

 

 

最後に

 

いかがでしたか?DAPの心臓部ともいえる「DAC(デジタル/アナログコンバーター)」がどのようなはたらきを持っているのかについて、知っていただけたかと思います。

 

DACの違いで音が変わるとなれば、是非聴き比べたいとなるところではあるのですが、DACから出た信号をアンプで増幅するという先述の説明からもわかるように、プレイヤーの音はアンプの性能なども大きく影響してくるので、残念ながら普通は「このDACはこの音」みたいなことを単体のDAPから直に聴き取るのはわりと困難です(アンプなどの音が加わって最終的な「音」になっているため)。

 

ただ、同じDACを採用した様々なプレイヤーを聴いて、だいたいの音の共通点を見出すことは経験則上可能ですので、e☆イヤホンの店舗にご来店いただく機会がもしあれば、いろいろ聴き比べてみてください。

 


 

次回は、有名なDACチップのメーカーにはどんなところがあるのか、それを採用している代表的なDAP製品とともに具体的な紹介を行いたいと思います。

 

そんなの待ってられねえ!という方は、Astell&Kern製品の聴き比べがオススメです。同じ第4世代で製品のラインナップごとにDACのメーカーが全く違います。これを基準に他のDAPを聴いていってもいいかもしれないですね。

 

 

 

 

 

それでは、今回はここまで!

eイヤホンスタッフの、ののがお送りしました!