HDシリーズ最新作『HD660S』は、HD600&HD650とどう変わったのか?
だいせんせいです。
皆さんは『HD660S』というヘッドホンをご存知でしょうか?
ドイツの名門・SENNHEISER(ゼンハイザー)によって2017年に発売されたヘッドホン。
開放型モニターヘッドホンのマイルストーン的モデル『HD650』の後継機種です。
『HD660S』の過去機種について
SENNHEISER・HDシリーズの600番台は、日本国内において3モデル存在します。
・HD600(1997年発売/2017年国内発売)
・HD650(2004年発売)
・HD660S(2017年発売)
HD600は、1997年に発売されたヘッドホン。
リケーブルが可能な開放型ハイエンドモデルとして、その先進性から注目を集めるも、当時は日本国内で正式な販売はされませんでした。
その後、よりオーディオライクにブラッシュアップされたモデルとしてHD650が2004年に登場。
先述の通り、開放型ハイエンドヘッドホンのリファレンス的機種として長く愛されてきました。
そして2017年!
そんなHD650の意匠を継いだ新モデルHD660Sがリリースされたばかりか、
国内では数量限定販売だったHD600までも定番化する運びとなりました。
こうして、日本に3つのHDシリーズ・600番台のヘッドホンが揃ったのです。
それでは早速、実際に聴き比べてみます!
試聴にはAstell&KernのACRO L1000を使用しました。
【試聴音源】
Beat It (Single Version) / Michael Jackson(96kHz/24bit)
誰もが誰かを / ORESAMA(96kHz/24bit)
メインテーマ / ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(44.1kHz/16bit)
HD600
情報量は多いものの、やや平面的な鳴り方。分析的な印象の強いサウンドです。
音の輪郭はひたすら鮮明で、それでいてイヤなシャープさは無く、耳当たりのほど良さは現代のSENNHEISER製品にも通ずる『らしさ』を感じます。
やはり飾り気の無いモニター的な音ということもあり、人によっては聴き疲れを感じる方もいらっしゃるかと思いますが、
開放型ならではのヌケの良さも相まって、いわゆるモニターヘッドホンと比べても聴きやすい部類に入るでしょう。
むやみに主張するようなメリハリはありませんが、音色傾向としては硬めで、打ち込み系の機械的なサウンドが似合います。
総じて、20年前の製品ながら、改めて現代でも通用するクオリティの高さに驚きました。
ただ、スペックの数字以上に(他2機種と比べて)音量が取りづらく感じたので、パワーのあるアンプやインターフェースに繋いでの視聴が望ましいところです。
HD650
HD600と比べても温かみを覚える音で、モニターとしても使える明瞭な解像感がありつつも、フォーカスは僅かにやわらかになっています。
バランスの良さはHD600譲りながら、聴き比べるとリスニングライクにシフトしている印象。
平面的なHD600と比較すると尚更強く感じるポイントですが、上下左右の広さに加えて奥行きの描き分けが秀逸。音の立体感が一回り違います。
残響の表現や音の厚みが絶妙で、音楽的な聴き応えが抜群に向上しているのは、伊達に『名機』と呼ばれていないな、と感じます。
HD600よりもアナログ的な鳴らし方で、生音系の心地よさは代えがたいものがあります。
上述の通り空間表現にも優れ、特にオーケストラなど、規模の大きな音楽においてのスケール感は段違いに素晴らしいです。
HD660S
基本はHD650のサウンドを踏襲しつつも、一音一音を優しくより正確に鳴らしている丁寧さが感じられます。
HD600・HD650と比べても解像感がさらに高く、その輪郭は鮮明。
この辺はハイレゾクオリティの音源も視野に含めた、現代的なニーズにマッチした音作りとも受け取れます。
相対的にアタック感はやや弱くなったように感じるかも。特に低域は引き締まって落ち着いたサウンドに。
ただ、個人的にHD660Sのキモだと感じるのは中高域(特に中域)。
バランスとしても質としても、中高域がより印象的になっており、倍音の表現などがさらに洗練されています。
その恩恵もあってか、微細な残響や余韻まで見通しよく再現し、スケール感は一層進化していると感じました。
インピーダンスが半分の150Ωと、従来機種と比べてもかなり鳴らしやすくなっているところもポイント。
より幅広いシーンで使いやすいヘッドホンに進化したと言えるでしょう。
HD650とHD660Sの違い
続いて、HD660SとHD650の変更点も確認していきます。
(※HD650とHD600の変更点は下記ブログをご確認下さい)
HD660SとHD650の変更点
パッと見の筐体設計は殆ど同じで、イヤーパッドにも互換性があり、装着感もほぼ同一。
細かな違いを見ていきましょう。
印象として大きく異なるのは、やはり筐体カラーの変更でしょうか。
前機種のHD650が光沢のあるガンメタリックだったのに対し、HD660Sはマットブラックへと変化しています。
このマットブラックはIE800Sなどにも近いカラーなので、SENNHEISERの現ラインナップの共通デザインなのかもしれません。
型番のプレートのカラーリングも変わっていて、HD660Sはかなり落ち着いた印象を受けます。
ヘッドバンドの印字も大きく変わっています。
HD650は左右にまたがるように旧ロゴが大きく描かれていますが、
HD660SはL側に小さく新ロゴがあしらわれているのみ。
この辺は好みの差が大きそうなポイントですね。
ヘッドクッションの形状・素材もほぼ同一。
ハンガー部なども、塗装を除いて殆ど同じ形状に見えます。
パンチングが施された開放型のハウジングプレートも、カラーが黒になったこと以外は一見同一ですが……。
HD660SにはSENNHEISERのロゴが新たにデザインされており、周りがエンボス処理されています。
個人的にはSENNHEISER製品であることがバシッと主張出来て好み。
ちなみに、ケーブルはHD650とHD660Sで同一のものだそうです。
3機種のスペック比較
それぞれのスペックは以下の通り。
HD600 | HD650 | HD660S | |
周波数特性 | 12 〜 40,500Hz | 10 〜 41,000Hz | 10 〜 41,000Hz |
インピーダンス | 300Ω | 300Ω | 150Ω |
感度 | 97dB | 103dB | 104dB |
本体質量 | 約254g | 約260g | 約260g |
HD650→HD660Sのスペックを比較すると、周波数特性や本体質量は同一であることがわかります。
ただ、インピーダンスが300Ωから半分の150Ωへと大幅に低くなっており、感度も104dBへアップ。
実用ベースとして、なかなか鳴らしやすくなっていることがわかります。
パワーのあるDAPやポータブルアンプでもお楽しみ頂けるのではないでしょうか。
以上、SENNHEISER HDシリーズ・600番台3機種のご紹介でした。
個人的にはHD660S、かなり好みです。
やはり現代的な音楽に合わせた音作り・設計がなされたヘッドホンは、近年のオーディオ環境にもしっかりマッチしてくれます。
ぜひぜひ皆様も、ご自身に合った一本を見つけてみて下さいね!
お相手はだいせんせいことクドウでした。それではまた次回。