どもっ!eイヤホンのたっくんです!
HIGH END 2019 Munichは毎年5月にドイツ・ミュンヘンで開催されるヨーロッパ随一のオーディオイベントです。
主にピュアオーディオ製品が中心のイベントで、欧州ブランド始め多くのブランドの新製品お披露目の場となるイベントとなります。
ということで、早速レポート!
Astell&Kernブース
High Endの会場の中でも一際大きく注目を集めていました。
歴代のAstell&Kern製品も並ベて展示されていました。
事業本部長のTedさん、研究開発部門責任者のCHARLIEさんにお話を伺いました
日本のユーザーにぜひAstell&Kernの最新モデルについて伝えてほしいとのことで、インタビューをさせて頂けることになりました。お忙しい中ありがとうございました。
A&ultima SP2000
Stainless Steel、Copperの2色展開、海外ではSP1000と同価格の3,500ドル(価格は調整中)で、2019年7月頃発売予定のAstell&Kernブランドのフラッグシップに当たるDAPです。
Astell&KernではAK380から2年ごとに、ブランドのフラッグシップモデルとなる新製品を展開しています。SP1000同様に、Astell&Kernブランドとして、その時点で最高峰の音質を目指したモデルとなります。
「A&ultima SP2000」4つの特徴
・旭化成エレクトロニクス最新DAC「AK4499EQ」世界初搭載
・32bit/768kHz、ネイティブDSD 22.4MHz再生に対応
・デュアルバンド Wi-Fiに対応
・新チップ採用に合わせ一新された回路設計
・旭化成エレクトロニクス最新DAC「AK4499EQ」を世界初搭載
SP2000は旭化成エレクトロニクス(AKM)の最新フラグシップDAC「AK4499EQ」をデュアルで搭載しています。AK4499EQを搭載した製品は、DAP・据え置きオーディオ機器も含めてSP2000が世界初となります。Astell&Kernのフラッグシップモデルとして、さらに高い解像度、さらに広い音場、そしてよりリアリティのある音を求め、AKMの最新DACチップの採用を決めたそうです。
AK4499EQはAK4497と比較して性能が向上していますが、消費電力が大きくポータブル機器への搭載にはかなりの苦労を要したそうです。AK4499は旭化成エレクトロニクスで初めての電流出力型DAC素子となり、これまでの電圧出力形式のものが使用できないため、デザインこそSP1000と似ているものの、中身は完全に一新された全くの別物となっているそうです。
SP2000の開発を進めるにあたり、旭化成エレクトロニクスとはDACの開発段階から協力し、AK4499EQのチップ性能を最大限引き出すと同時に電源効率を最適化し、SP1000と同じ容量3,700mAhのバッテリーを搭載しつつ、再生可能時間は若干減る程度に留めることが出来たそうです。この効率化の部分だけで3ヶ月もの時間を要したそうです。
給電しながらのDSD音源の高負荷長時間再生時などの発熱こそ不可避ですが、通常使用時での発熱はほとんどない様に抑えているそうです。また、SP1000と同じくオクタコアCPUを搭載し、Femtoクロックも同様に採用しています。この部分はSP1000と同じものが採用されています。
※翻訳するのが難しい部分で、内容に若干の誤りがあるかもしれません。
・32bit/768kHz、ネイティブDSD 22.4MHz再生に対応
SP2000は下記のフォーマットとサンプリングレートに対応しています。
対応フォーマット:WAV, FLAC, WMA, MP3, OGG, APE, AAC, ALAC, AIFF, DFF, DSF, MQA
対応サンプリングレート:PCM: 8kHz ~ 768kHz (8/16/24/32bits per Sample) / DSD Native: DSD64(1bit 2.8MHz), Stereo
/ DSD128(1bit 5.6MHz), Stereo / DSD256(1bit 11.2MHz), Stereo / DSD512(1bit 22.4MHz), Stereo
音源が限られそうですが、AK4499EQを搭載した事で、ネイティブDSD 22.4MHzの再生に対応しています。
・デュアルバンド Wi-Fiにに対応
SP2000はAstell&KernのDAPとして初めて、デュアルバンドWi-Fi(2.4/5GHz、b/g/n/a/ac)に対応しました。
写真の黒いパーツがアンテナパーツで、SP2000上部と背面上部は筐体素材と異なる素材を採用し、Wi-FiとBluetoothの接続安定性を確保したそうです。
・新チップ採用に合わせ一新された回路設計
SP2000もSP1000同様に、2.5mmバランス/3.5mmアンバランスのヘッドホン出力に対応しています。
SP2000では単体でもヘッドホンアンプが大幅に強化されています。SP1000の出力がバランス 3.9Vrms/アンバランス 2.2Vrmsだったのに対して、SP2000の出力はバランス 6Vrms/アンバランス 3Vrmsまで引き上げられています。この数字はSP1000 AMPのローゲインと同程度の数字となります。単体でも高出力が確保できているので、SP2000では外付けヘッドホンアンプを用意する予定はなく、アンプ接続用の端子が廃止されました。
さらにS/Nは125dB、THD+Nは0.0004%(バランス/アンバランス時)を実現をしているそうです。ちなみにSP1000はS/Nが122dB、THD+Nが0.0008%(バランス時)でした。
※開発中の製品のためまだ最終確定ではないとの事です。
・その他のトピック
UIはSP1000と同じですが新たにCar modeが追加されていました。Car modeでは横画面表示とシンプルな操作画面に切り替わります。また、自身が作成したEQのパラメーターを他のユーザーへシェアする機能も備えるそうです。この2つの機能は第4世代のUIを採用した機種にもFWアップデートで対応可能との事でした。
また本体容量がSP1000の256GBから、SP2000では倍の512GBに増強されています。SDカードスロットは、従来のピンで開けるトレイ式のものから、差し込み式に変更されていました。
SP2000とSP1000を比較
SP2000とSP1000の外観を比べていきましょう。
上述の通りMicroSDカードスロットが変更されているのが分かりますね。MicroSDスロットのトレーがSP2000では廃止されています。「SDカード交換がしにくい」とSP1000ユーザーから寄せられた意見を元に仕様変更をしたそうです。
そして外部アンプ接続用の端子も廃止されているのが分かりますね。DAP単体で最高の音を目指したモデルとし、出力端子を廃止したそうです。
背面はカーボンパネルがなくなり、筐体素材そのものの質感を楽しめるデザインが採用されています。
本体形状も似てはいますが、SP1000と比較してさらにエッジの効いたデザインになっているように感じました。また、背面右上にある固定用のネジ穴も廃止されているのが分かります。
本体右側部分の比較画像です。
SP2000とSP1000のデザインは似ていますが、よりメリハリの効いたデザインに変更されています。
電源ボタンも似ているようで、デザインが変更されています。SP1000では電源ボタン中央部が窪んでいるのに対し、SP2000では電源ボタン中央に向かって山状に出っ張っているデザインが採用されています。
本体左側部分の比較画像です。
サイドボタンがSP1000では丸ボタンが採用されていたのに対し、SP2000ではスクエアなデザインのボタンが採用されています。SP1000を使用していてケースを装着した際に、ボタンの位置が分かりにくいと感じていましたが、より大きなボタンに変更された事で、押しやすさが向上している様に感じました。
本体上部の比較画像です。
3回目の説明になってしまいますが、microSDスロットの位置がSP2000では本体下部に移動しています。SP2000ではAstell&KernのDAPとして初めてデュアルバンドWi-Fiに対応しています。こちらも先述の通り、本体背面のデザインを全て金属で覆わなかったのは、上記の通りWi-FIとBluetooth接続の安定性を高めるためとのことです。
SP1000とSP2000を聴き比べしてみた
試聴には日本から持ち込んだ「Astell&Kern AK T8iE MkII」と、日頃から愛用している「Ultimate Ears Reference Monitor」を用いました。
SP1000 Copperを使用しいているので、SP2000もCopperモデルを用いての比較です。
前置きをしておくと、SP2000はまだ開発中の製品ため、今回のHigh End 2019 Munich直前までチューニングをしていたそうです。この後も仕様変更やチューニングの変更が入る可能性がありますので、製品版と音質が異なる可能性があることをお伝えしておきます。
SP1000 CPから基本的には大幅な方向性の違いは無く、あくまで高解像度で素直かつ端正なサウンド、SP1000もSP2000もリファレンス機として万能に使える印象を持ちました。その中で相違点を見つけていくと、SP1000 CPの方が繊細でやや柔らかなサウンドなのに対し、SP2000 CPは音の立ち上がりが鋭く鮮明な音の印象を受けました。どちらも十二分にノイズレスで全く不満はありませんが、SP2000 CPのS/N感の良さと、さらに精細に音を描き出すような分解能の高さが際立って感じました。このS/N感の良さや分解能の高さは最新チップを採用している恩恵なのかもしれません。音場はSP2000 CPの方がやや広がりを感じました。SP1000からさらなる高精細なサウンドと音の広がりを求めるのであればSP2000 CPを、密度感や一体感を求めるのであればSP1000 CPという印象でした。
またSP2000 Stainless StealとSP2000 Copperの比較ですが、Stainless Stealの方がさらに端正で鮮明なリファレンスを追求したサウンド、Copperの方はよりリアリティさや空気感重視という印象でした。Refrence MonitorやAK T8iE Mk2だとStainless Stealの鮮明なサウンドの方が相性が良く感じました。AK T9iEは低域側のリアリティさが際立つSP2000 Copperとの相性がよかったです。また手持ちしなかったのが悔やまれますが、Victor HA-FW10000とSP2000 Copperの組み合わせが、かなり良さそうに感じました。
SP1000 AMP
SP1000 AMPは、「A&Ultima SP1000」専用の外付けアンプモジュールです。Stainless Steel、Copper、Onyx Blackの3色展開を予定しています。
単体でも重量が重いSP1000にさらに重量が増えてしまうため、軽量かつ音質にも定評があった「AK380 AMP」と同様のブラックに塗装されたアルミ筐体が採用されています。3色の化粧板に当たる部分のみ、ステンレススチールが採用されているそうです。
2.5mmバランス/3.5mmアンバランスのヘッドホン出力に対応しています。
[Low Gain] Unbalance 2.9Vrms / Balance 6.2Vrms
[High Gain] Unbalance 6.2Vrms / Balance 10Vrms
のハイパワーな出力を備えています。
さらにSP1000と合わせて使用する専用のケースが付属しています。
SP2000にフラグシップが切り替わるタイミングでSP1000 AMPが登場した理由についても説明をして頂きました。当初の計画では他メーカーとコラボするために外部出力端子を備えていたそうです。しかし、他製品との接続が難しくSP1000専用のモデルとなることで、他メーカーとの開発が難航し、最終的にAstell&Kernとしてお客様との約束を果たすためにSP1000 AMPを用意することを決めたそうです。
AK380 AMPの時には、AK380、AK320、AK300の3機種との相性を考慮したバランスの良い製品を作る必要があったが、SP1000専用モデルなのでSP1000の特性に合わせ、SP1000の性能を徹底的に引き出すことだけに集中した開発が行えたそうです。
試聴してみましたが、まさにSP1000のバランスそのままに圧倒的な力強さのみが加わるような印象でした。SP1000を使用してきて音質に不満は全くありませんでしたが、ここ最近のコンデンサー型ドライバーを搭載した鳴らしにくいイヤホンを使用した際に、かなりボリュームを上げる必要があると感じていました。SP1000の出力をさらに強化してくれる製品として、装着時のサイズの大きさや重量感はポータブルの範囲を超えている様に思いますが、鳴らしにくいイヤホンを使用されている方や、据え置き向けヘッドホンも鳴らしたいという方はぜひ検討して頂きたい製品です。まだ確定情報ではありませんが、SP1000 AMPは限定販売になるかもしれないとの事でした。
AK T9iE
「Astell&kern」と「beyerdynamic」のコラボイヤホン「AK T8iE」から、後継モデル「AK T9iE」も発表されました。
ケーブルはAK T5p Second Generationと同じ、高純度無酸素銅の 7N OCC 銅線に、4N 純銀をコーティングしたハイブリット構造を採用。Astell&Kern DAPを使用してチューニングが行われたそうです。
AK T8iEで用いられたテスラドライバーは変更をせずに継続して使用しており、ハウジング中央にアコースティックベントポートを設け低域を拡充し、アコースティックフィルターを追加しチューニングを変更しています。
AK T9iEについては、High End 2019 Munich会場にbeyeerdynamicから直接サンプルが送られて来そうで、サンプルが2台しかなくまだまだ開発段階とのことでした。
AK T9iEをきいてみた
AK T8iE Mk2と比較すると、AK T9iEはより低域側に重心が下がり、低域側のリアリティさが向上しているように感じました。AK T8iE Mk2が鮮明でトーンの明るいブライトな音の印象に対し、AK T9iEはややトーンが落ち着きよりニュートラルでウェットなサウンドを鳴らす印象を受けます。解像度などは大きな差を感じませんでしたが、AK T8iE mk2からはキャラクターが変わっているので、AK T8iEをお持ちの方はご購入前に試聴されることをお勧めします。
という事で、Astell&Kernブースに展示されていた新製品をご紹介しました!
以上たっくんでした!
PS.ミュンヘン空港に直通している路線が、工事作業で全線不通になっていて、帰国にとても苦労しました(^^;
イヤホン・ヘッドホン専門店「e☆イヤホン」社長のたっくんこと岡田卓也です。
元々イヤホンが趣味で、e☆イヤホンのお客の一人でしたが、2010年にe☆イヤホンにアルバイト入社し、早いもので十数年。気が付いたら社長として働くことに。
社長になる前は、TBS『マツコの知らない世界』に3回出演するなど、主に広報などPR関連の仕事をしていました。
カスタムIEM「VISIONEARS ELYSIUM」と、モニターヘッドホン「AUDEZE LCD-XC 2021」がお気に入りです。