ドイツにあるカスタムIEMブランド『VISION EARS』の創設者2名にインタビューをしてみました。オーディオファンからミュージシャンまで幅広くファンを増やし続け、そして愛されているブランドの魅力に迫ります。
VISION EARSって?
VISION EARS(ヴィジョンイヤーズ)は、2013年に設立したドイツ・ケルンのブランドです。長年にわたりドイツや他の多くの国々で歌手/ギタリストとして活躍したMarcel Schoenenと、彼と同じインイヤーモニターの会社でのキャリアを積んだAmin Karimpourの2人の創設者により、最高品質のカスタムIEMと優れたサービスを提供しています。また、創設者たち同様に知見と技術を蓄積してきた職人たちでチームを形成し、少人数のラボで多くのカスタムIEMを生み出しています。誰もが認めるクオリティーとサウンドはドイツ国内にとどまらず国外にも多くの有名なミュージシャンやバンドに認められています。
e☆イヤホンでは2014年夏からオーダーをスタートし、約600件ものオーダーがあります。今回はそんな大人気カスタムIEMブランド『VISION EARS』の創設者であるAminとMarcelにインタビューをしてみました。
AminとMarcelについて
ー日本は好きですか?
Amin:‟Like”ではなく、もうこれは‟LOVE”です!笑 ;-) 私たちはポタフェスに4年ほど前から参加していますが、日本を訪れる時はいつも特別な喜びを感じています。日本の街はとてもきれいに整理されていますし、日本人はフレンドリーで心をオープンにしているので、身も心も快適に過ごすことができます。また、東京はとても大きな都市なのに落ち着いている公園や神社、お寺など、オープンでゆっくり休憩できる場所がたくさんありますよね。機会があったら日本の名所を観光してみたいです!
Marcel:すべての素敵な人々と素晴らしいホスティング(OMOTENASHI)。ドイツと日本はちょっと似ているのかもしれませんね。人も文化も。とても居心地がいいんです。
ー趣味は何ですか?
Amin:幸運にも音楽を聴いたりイヤホンで良い音を楽しんだりすることが趣味です。だから毎日仕事場で趣味を楽しむことができます;-)
Marcel:以前にいたバンド、Suidakraと一緒に音楽をやることです。私たちは今年ベストアルバムをリリースするつもりです。私はボーカルをするためにスタジオでみんなに加わる予定です。あと自転車に乗るのが大好きですし、家族と一緒に時間を過ごすのが大好きです。小さな3人の子供がいるので趣味の時間はあまりありません;-)
ーどんな音楽が好きですか?
Amin:Motown
Marcel:私は幅広く音楽が好きですね。
Machine Head,Korn,Opeth,Slipknot,Godsmackのようなメタルだけでなく、Jamiroquaiのようなポップミュージック、Pink Floyd,Queen,The Policeも聴きます。また、Hans Zimmerのサウンドトラックの音楽も素晴らしいとも思います!と、言ったように、非常に広い範囲で音楽が好きです!笑
ーあなたの好きなアーティストは誰ですか?
Amin:Stevie Wonder
Marcel:Freddy Mercury
ー最初に使用したカスタムIEMは?
Amin&Marcel:最初のカスタムIEMはHearsafeの“HS2 ProFlex”というモデルでした。当時(2003年)のドイツでは最先端のシンプルな2WAYシステムだったのを覚えています。
ーDAP /イヤホン/ヘッドホンなどを聴こうとしたら、どの曲を聴きますか?
Amin:Totoの「I’ll remember」を聴いてます。
Marcel:私はいくつかあります。 DAPやイヤホンの音を分析するために使用している曲は6曲。Michael Jacksonの「Liberian Girl」、Chris Jonesの「No sanctuary here」「Roadhouse and Automobiles」、Stingの「The hounds of winter」と「It´s probably me」、そしてLordeの「Royals」です。
VISION EARSについて
ーなぜあなたはブランドを作ろうと思いましたか?
Amin&Marcel:Marcelは2000年に、Aminは2003年に補聴器のHearsafeという会社に入社しました。当初は一緒に働く同僚というだけの関係でしたが、最終的にはとても仲の良い友人になりました。私達はカスタムIEMに対する共通の熱意や野望を持ち、そのブランドに深く関わっていきました。そして自分たちのアイデアで新しい製品を開発することが楽しくて仕方なくなったので2人でブランドを立ち上げたんです!
ーブランド名について
Amin:私は会社名を「AMIN EARS」にしたかったのですが、Marcelからダメだと言われました、、、
Marcel:VISION EARSと名付けたのは私です。みんなに愛される名前をつけれたと思います!
ーVEのモットーは何ですか?
Amin&Marcel:All you need is loVE ?
ーカスタムIEMを製作するとき、最も気にしていることは何ですか?
Amin&Marcel:心のこもった対応とともに完璧な商品をお届けすること。とにかく品質管理を重要視しています。高い水準を維持するために、多くのチェックポイントを設けて製作しています。
ーVISION EARSの強みを教えて下さい。
Amin&Marcel:チームVISION EARSはみんな仲間です!一人ひとり個性が全く違うのに、みんな同じ目標を持って働いています。それは簡単なようでとても難しい事なはずなのですが、チームとして本当に良い仕事をしていると思います。そして、何よりも彼らと仕事をすることが大好きです!他の多くの会社と比べて、私たちは会社を大きくしたいとは思っていません。私達は今のサイズで満足していています。なぜならこのサイズでいることで最高品質で製造できているからです。会社を大きくしたときにこれを失うことを恐れています。そのため、将来を見据えて、量を増やそうとするのではなく、より品質を向上させ、より優れた製品を生み出すことを目指しています。
ーどんな人にVEカスタムを使ってもらいたいですか?
Amin:カスタムIEMを大切に扱う人なら誰でも!他の人があなたのために情熱を持って作ったものなので尊重して使用してくれたら嬉しいです。それは、父がいつも私に教えていたことの一つでした。
ーカスタムIEMのチューニングについて教えて下さい。
Amin&Marcel:私たちが製品を開発するとき一番最初に考える事です。例えば、、VE5は中域が非常に優れていて尚且つバランスのとれたカスタムIEMを作りたいと考えていました。VE8は多くのディテールを提供しながらも、非常に幅広く滑らかなサウンドを作成したいと考えていました。各国のオーディオショーでは、顧客や他の人々の話を聞いて、ユーザーがどのようなサウンドを好むのかを調査しています。
ーどのモデルがお気に入りですか?
Amin:この質問はフェアじゃない!笑 お気に入りの子供を母親に尋ねるようなものです…笑 すべてが同じ情熱を持って作られていますからね。強いて言うならば、ERLKoNIG(スイッチ2)のサウンドが最も好きです。今の現時点ではね!私はよくVEモデルを使い分けているので、それは毎日の気分によって左右されます;-)
ー製品や顧客に関して最も記憶に残るエピソードはありますか?
Amin&Marcel:今までにたくさんのストーリーがありました:-) ひとつお話しするとしたら、、一人のVEユーザーが私たちのオフィスにやって来て、カスタムIEMを洗濯機で洗ってしまったと悲しそうに話しました。私たちはまずカスタムIEMをチェックさせてもらえるかどうか尋ねましたが、そのカスタムIEMはもちろん機能してなかったため、すでに捨ててしまった後でした、、彼は友人から別のVEモデルを購入するためにわざわざお金を借りてきていたので、私たちは新しい耳のインプレッションを採取し、彼は新しいカスタムIEMを注文をして帰りました。次の日、彼は洗濯機で洗ってしまったカスタムIEMをゴミ箱から拾い、再度ラボを訪れました。私たちが彼のカスタムIEMを調べると、奇跡的にフィルターだけが水でぬれている状態であることが発覚しました。フィルターを交換するとカスタムIEMはすっかり直りました。とってもラッキーな人!!
ーVISION EARSの夢はなんですか?
Amin:VISION EARSがMarcelと私がいなくなった後でも存在し続けることです。私には子供がいます(息子は5歳、娘は3歳です)。息子には音楽を注意深く聴き、デティールまで聴くことを教えています。現在はヘッドホンで教えていますが、もうしばらくしたら初のカスタムIEMを作ってあげるつもりです。私の子供たちやMarcelの子供たちがVISION EARSを引き継いでくれることを望んでいます。それが私たちの夢です!
オーディオ業界について
ー他のカスタムIEMブランドについてどう意識していますか?
Marcel:他のカスタムIEMブランドの製品について話すのは難しいですが、私たちは他の多くのメーカーととても友好的な関係にあります。ショーで会ったら、いつもお互いのブースに行って最新の製品をチェックし合います。そしてショーの後は一緒にビールを1、2杯飲みます笑。
ーこのオーディオ業界についてどう思いますか?
Marcel:カスタムIEMブランドにとって、今は非常にエキサイティングな時期です。いろんなブランドが多くのドライバーをシェルに入れることを止めましたね。「ドライバー戦争」と呼ばれていたけど、今は静電型、圧電型、平面型など、他のドライバーテクノロジーをカスタムIEMに使用しようとしています。より多くのドライバーをシェルに入れることは私の視点からすると革新的ではなかったので、本当の挑戦が始まったと思っています。また、この業界はまだまだカスタムIEMよりユニバーサルモデルを好む傾向があると見ています。これは私達が将来、直面しなければならない課題です。
フラグシップモデルELYSIUMについて
ーELYSIUMの名前の由来は?
Amin&Marcel:ELYSIUMという言葉の起源は古代ギリシャ神話に由来します。古代ギリシャの人々は、エリジウムとは「勇敢な人と尊敬するに値する人々のために用意された天国の一部」と信じていました。現在でもこの言葉は最大の楽しさを表現するときに使用されています。私たちはこのカスタムIEMが絶対的な至福を提供するものだと確信し、ELYSIUMと名付けました。
ーELYSIUMの開発にどのくらいかかりましたか?
Amin&Marcel:2年前に開発が開始されました。非常にシンプルに見えますが、ドライバー数はわずか4つで、3つの異なるテクノロジー(BAドライバー、ダイナミックドライバー、静電型ドライバー)を調和させることは難しい挑戦でした。独自にチューニングをしたダイナミックドライバーのために、HALC(High-Precision Acoustic Levelling Chamber)と呼ばれる音響調整モジュールを開発しました。また、静電型ドライバーは電圧を必要とするので駆動するのが大変困難です。従ってシェルの内側に静電型ドライバーに電力を与えるを入れる仕組みを開発しました。
ーELYSIUMのコンセプトは何ですか?
Amin&Marcel:私たちが作り上げたかったELYSIUMは、オープンでリラックスしたサウンド、そして豊富なディテールです。静電型ツイーターを採用したので高音は非常に伸びています。伸びていると言っても、それはとても前にでているとか、量感が大きくなっているという意味ではありません。高域がより高いところまで出るようになり、より開放的で広々としたサウンドになるという意味です。中域にはダイナミックドライバーを使用し、自然でリアルなサウンドに仕上がりました。ほとんどのメーカーは低音にダイナミックドライバーを使用していますが、私たちBAの低音が好きなのでそちらを採用しました。実際にELYSIUMの低音は、中域に採用したダイナミックドライバーも少し働いています。
ドイツについて
ードイツでオススメの場所は?
Amin:Cologne(ケルン)です!是非遊びに来てください!私たちの街の美しさをお見せしましょう。ケルンの市民は自分たちの街をとても誇りに思っています。ケルンにはビール、ドイツ語の方言、そしてここでビジネスをしている多くの会社があります。これが私たちの製品に「Handcrafted in Cologne」という言葉も使っている理由です。ケルンは魔法が起こるところです;-)
ードイツのベストフードを教えてください。
Amin:一般的に伝統的なドイツ料理はあまり人気がありません。レストランを探していたら、イタリア料理、トルコ料理、ギリシャ料理、インド料理、中華料理、韓国料理、その他多くの外国料理を選択するでしょう。笑 でもあなたが伝統的なドイツ料理を探しているのであれば、ここにはたくさんの古い「Brauhaus」があります。Brauhausとは「ビール醸造所」という意味です。非常に巨大なレストランで、かなり古くて伝統的です。そしておいしいソーセージと豚肉のナックルを食べれます。ビールと一緒に!グラスが半分ぐらいになるとウエイターは尋ねずに新しいビールを隣に置きます。もうこれ以上ビールが飲めない場合は、グラスの上にビールコースターを置いてください。これはウェイターへの満腹の合図になります;-)
ーあなたから日本の顧客に一言お願いします。
Marcel:ARIGATO!私達と私達の製品に対するあなたの信頼に感謝します。ポタフェスでお会いし、新しいVE 3.2,VE 4.2そして素晴らしいELYSIUMをお届けできることを楽しみにしています。
Amin:KANPAI!IKKINOMI!AISHITERU!
関連情報
■ELYSIUM,VE3.2,VE4.2解禁。
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