大先生です。
いやあ、ついにこの日が来ましたね。
SENNHEISER IE 80 S
IE 80 S。
2011年発売の『IE80』――ひいては2008年発売の『IE8』――の後継機として、6年ぶりの刷新となった本機種。
先代機種はどちらも高い評価を持ち、同価格帯の代表的なモデルとして長く愛されてきた実績があるだけに、今回も皆様の期待の高さを感じております。
そして、高い期待を抱いているのは皆様だけではありません。
何を隠そう、僕こと大先生もIE80ユーザーの一人。
僕にとってのIE80は、イヤホンにハマるきっかけを作ってくれた運命的な一本。今でも5年ほど使い続けています。
そんな、何よりも大好きなイヤホンであるIE80の後継機種が発売されたということで……
買ってきちゃった。
早速開封していこうと思ったのですが、数日前のはまちゃんの記事が丸被りしているので、付属品等の詳細につきましてはそちらも併せてご覧ください。
とりあえず僕が付属品に対して言いたいのは、付属のケースがめちゃめちゃ使いやすそうになっているということです。
布張りになったジッパーケース。手触りもよく、セミハードかつ軽め。
やや大きめですが、バッグに入れやすい気軽さがあります。
超シビアな作りだったIE80のケースと比べると、かなり汎用性の高そうな感じ。
ただ、『イヤホンはここにピタッと収めてね!』っていう感じのキッチリ感はSENNHEISERっぽくて(?)良いですね。
続いて、Twitterで何件か質問を頂いておりましたので、そちらも踏まえつつ実機に触れていきます。
というわけで、徹底比較して参りましょう。
まずはイヤホン本体から。
フェイスプレート全体がアルミになっているIE80に対し、IE80Sは一部のみ、ゼンハイザーロゴと低音調整ダイヤルの周りだけがアルミプレートになっています。
象徴的だったヘアライン加工もそのままで、なんだかIE80とIE8と合わせたようなデザインにも感じますね。
また詳細は後述しますが、向かって上側の角が丸くなっているのがわかります。
フェイスプレートを底面にした場合の高さはほぼ同一。
ただ、ノズルの反対側のカーブを見てみるとIE80Sの方が少しだけ盛り上がっているように見えます。
上から見ると、ハウジングの角がかなり丸くなっているのがわかると思います。
着ける際に耳に当たる部分なので、これによってかなり装着感が変わっています。
全体的にややぼてっと丸みを帯びた印象のIE80Sですが、装着感はかなり良くなっていますね。
ちなみに、ノズルの太さ・長さもほぼ同一ですので、IE80で使用していたイヤーピースがそのまま使えると思います。
続いてケーブルを比較。
端子部は若干形状が異なるながらも、大きさは概ね同じ。
ただ、IE80Sの方には赤のストレインリリーフが付いており、左右の視認性が大幅に向上しています。これによりLR表記もなくなっているのがわかりますね。
ストレインリリーフがコネクタとケーブルの間に挿入されていることもあり、曲げた時に掛かる負担も多少抑えられるかと思います。
また、IE80Sの方が若干ケーブルが太くなっています。
分岐部を比較してみます。
アジャスターのデザインが作り込まれている反面、分岐部自体のデザインは簡素なものになっています。
個人的にはIE80(IE8)の型番がビシッと書かれたデザインも好きだったのですが、この辺は好みによるところでしょう。
ちなみに、分岐部に関してはこんな質問が。
IE8のように分岐部のパーツがクリアじゃないのでなんともわかりませんが、IE80の分岐部の裏側にある穴の位置が同一なので、サイズ的にも内部構造は同様なのかも?
これに関しては確たる回答が出来ませんので(買って早々に分解したくないので)ご了承下さい。
プラグはL字型からストレート型に変更になっています。
使用環境等によってどちらが好みかは変わってくるところかと思いますが、IE80Sはケースを着けたスマートフォンなどにも接続しやすくなっていますね。
また、iPhoneのLightningアダプタとも相性が良い感じ。
それでは、こちらもIE80と比較する形でレビューしていきたいと思います。
試聴プレイヤーにはAK70MKIIを使用(これもはまちゃんと被った)。
楽曲は、ちょうどハイレゾ配信も開始されたということで放課後ティータイム『Utauyo!!MIRACLE』を使用しました。
比較条件は以下の4つ。
① 低音最小、各純正ケーブル使用
② 低音最大、各純正ケーブル使用
③ 低音最小、各純正ケーブルを交換して使用
④ 低音最小、onso製バランスケーブル『iect_04』使用
それでは早速聴いてみましょう。
① 低音最小、各純正ケーブル使用
まずはIE80から。もはやお馴染みの音です。
最小にしてもしっかり量感を感じられる低音と、一発目のスネアからわかるスパンというキレの良さ。
各楽器も明瞭で、位置関係が明確にわかります。当時はもちろん、今でもダイナミック型としてはかなり優秀な部類に入る解像度ではないでしょうか。
続けてIE80Sを聴いてみると……全然違う!
まず、全体的に圧が抑えられており、若干落ち着いた印象に。
音像がややシャープになり、中高音域が明らかにクリア。ハイハットなどが顕著で、その恩恵としてか、元々音場が広かったIE80と比べても更に見渡しが良い印象。
ゼンハイザーらしい『低域のうま味』などIE80の特徴は残っているものの、なんとなく優等生的な音になっていますね。
前にもTwitterで書いた『今風に作り直したIE80』という表現がやっぱりしっくりくる感じ。
②低音最大、各純正ケーブル使用
続いては低音調整を最大にして試聴。
IE80はベースやキックなどの量感がグッと増え、ボリューム感があります。
ギターのサウンドもよりディストーションが強調され、全体的に分厚い音になった印象。
そしてIE80Sに変えると、これまた低域が増えているものの、IE80とは強調の仕方が若干違うように感じます。
IE80はどちらかというとベースラインが膨らんでいる感じでしたが、IE80Sはキックの『どちっ』という力強さがより目立っています。
また、最小の状態が落ち着いていた印象だったせいか変化の振れ幅が広がっているようにも感じました。
IE80と比べても感覚的に1.2倍くらい変化しているように感じます。より広く調整出来るように、最小状態が落ち着いたチューニングになっているのかも?
③ 低音最小、各純正ケーブルを交換して使用
そう、これが楽しみでした。
IE80とIE80Sはケーブルに互換性があるので、その付属ケーブルの違いも気になっていたのです。
早速、IE80Sのケーブルを装着したIE80を聴いてみます……って、音が若干小さい。
逆にIE80のケーブルをIE80Sに着けてみると、これまた明らかに出力が違います。
スペック上のインピーダンスは同じながら、IE80Sは音圧レベルが125dBから116dBに低下しているのが気になっていましたが、
もしかしたらその調整をケーブル側で行っているのかもしれません。
ちなみに音としては、IE80Sケーブルを着けたIE80はやはり全体的に落ち着き、通常のIE80Sと比べてもちょっと地味な印象。
IE80ケーブルを着けたIE80Sは低域の量感が増えているものの、中高域が若干軽くなっているような感じ。
どちらも(本来の組み合わせと比べると)あまり相性が良くないように感じました。見た目がちょっと格好良かっただけに惜しい……。
④ 低音最小、onso製バランスケーブル『iect_04』使用
続いて、onsoから発売されているIEシリーズ用のバランスケーブル『iect_04』を使用した比較。
ケーブル端子が同一のため、上の写真の通りどちらにもしっかり装着出来ます。
IE80は、より締まりのあるタイトな音になります。
元々ダイナミック型ながら解像度に優れていたIE80だけに、バランス接続によって分離感や細かな音の描写がより正確になっています。
それでいて本来持つ音のバランスもあまり崩れておらず、いわゆる『IE80っぽくなくなった』ということが無いのがイイところ。
そしてIE80S。
IE80同様に輪郭がハッキリとする要素もありますが、それよりバランス接続によって改めて感じるのは中高域の進化。
特に中域の表現力の向上が顕著で、ボーカルの質感ひとつ取ってもリアルに伝わります。
また、AK70MKII自体の出力差もあるかと思いますが、アンバランス時と比べても少しエネルギッシュな感じ。
躍動感に満ちつつも、整え方は極めて繊細。非常に気持ちよく聴くことが出来ますね。
漠然と感じたのは、IE80と比べてもバランス接続に合ったチューニングになっているということ。
アンバランスで単純に比較しただけだと『若干落ち着いたかな?』と感じるような変化かもしれませんが、こちらの方がよりバランス駆動に映える音作りになっているように感じました。
発売予定のIE800Sもバランスケーブルが付属しておりますし、何よりIE80発売当時の2011年と比べてもバランス接続自体がかなり浸透してきているので、IE80Sのチューニングもバランス接続を意識していると考えるのが自然ではないでしょうか。
個人的にはこれが今のところ一番好きな組み合わせなので、バランス環境をお持ちの方はぜひ、僕が普段使っているディープマウントイヤーピースと併せてお試し頂きたいところです。
ちなみに、バランスケーブルで比較した場合だと先述の音量の差は感じませんでした。
【追記】
バランス接続に関しては、こんな質問も寄せられていました。
ZX300が無かったので、秋葉原店でサンプルを借りて聴いてみました。
全体的な音圧の強さや鋭さという面ではAK70MKIIの方が一歩リードという感じ。
打ち込み系の楽曲やロックなどはAK70MKIIの方が得意だと思います。
その一方で、ZX300は中域の生々しさに更に磨きがかかった印象を受けました。
ゆったりとしたテンポの曲だったり、生音系のサウンドに関してはZX300の方が巧く鳴らしてくれるかも。
ボーカル(というか、声の表現)は単体で見ると僅差でZX300の方がしっくりきました。
合わせての購入をご検討であれば、ぜひ聴き比べた上で好みに合わせて頂ければと思います。
最後に、僕の趣味と合致した素敵な質問が。
(ちょっと長くなるので、読み飛ばしても大丈夫です)
元々、5年程前の自分が『今買える中で最もアイマス曲と相性が良いイヤホン』として選んだのがIE80だったので(好みによると思いますが)、基本的にそのチューニングバランスを踏襲しているIE80Sも必然的にアイマス曲とは相性が良いと感じます。中高域が強化されたことによりさらに表現力もアップし、アイドルソングの根幹たるボーカルも質感が向上しているのが感じられます。
中でもIE80Sの持つ上質な低域とキレを考慮するに、EDM系のダンスミュージックのようなディープなサウンド、もしくはポップスやロックのような元気の良い楽曲と特に相性が良いと思います。
765PRO ALLSTARS系列の楽曲だと、ざっと挙げるだけでも『バレンタイン』『オーバーマスター』『Mythmaker』『We just started』『アクセルレーション』あたりが合うと感じました。
また、765ほど詳しくないので恐縮ですが、シンデレラガールズの楽曲だと『Absolute Nine』『ØωØver!!』『Tulip』『サマカニ!!』『あんきら!?狂騒曲』、
ミリオンライブ!の楽曲だと『ライアー・ルージュ』『フェスタ・イルミネーション』『創造は始まりの風を連れて』『インヴィンシブル・ジャスティス』『ローリング△さんかく』あたりが良い感じだと思います。
(SideMは僕のSDカードに楽曲があまり入っていませんでした……。後々検証出来ればと思います)
また、基盤たる低域がしっかりしており、音場も広いため、『眠り姫』や『ALIVE』、『こいかぜ』といったスケール感のある楽曲とも相性が良いですね。
スケール感といえば、ライブ会場の広い情景が浮かぶ楽曲として外せないのが『紅白応援V』。実際のライブでのプロデューサー達の歓声がサンプリングされている楽曲ですが、アイドル13名それぞれのボーカルはしっかり分離して聴こえつつ、どこまでも広がる歓声が見事に調和している空気感を見事に描いており、これまた相性が良いといえると思います。
他にも相性がいい楽曲は沢山あると思うので、ぜひご自身でもご試聴して頂いて、色々な楽曲を聴いてみて下さいね!
……というか、『紅白応援V』はマジで最高ですよね。765プロ全員で歌う楽曲で、季節やイベントならまだしも『応援』というような特定のシチュエーションをテーマにした楽曲は結構珍しく、まるでお祭りのような明るい曲調も相まって最高に盛り上がります。全員の個性がコール・アンド・レスポンスにしっかりと描かれているのですが、同じく全員の個性が描かれている楽曲としては『団結』『団結2010』がありますよね。元々『団結』に関してはXbox360用ソフト『ビューティフル塊魂』のサウンドトラックとして収録された楽曲で、そもそも『塊魂ユーザーにもアイドルマスターを知ってほしい』という意図も含まれているはず。そのため歌詞の内容は自己紹介のようになっているのですが、それに対して『紅白応援V』はメンバーの性格や、一種の『あるある』のようなものがしっかりと出ていて、『団結』が出会いの楽曲であるなら、『紅白応援V』は共に歩んできたというアンサーソングのような側面があると思います。それも765プロのアニバーサリーライブが無くなってしまった後の単独ライブで発表された楽曲というのがまたニクいところで、ひとつの節目を超えたはずなのに、この楽曲からは『別れ』や『終わり』の要素が微塵も感じられないんですね。それまで765のプロデューサーたちが抱いていた不安を吹き飛ばすような勢いがあり、改めてこの13人たちと共に歩んでいこうという思いが芽生えて…………
以上、本日発売の新機種『IE 80 S』のご紹介でした。
こちらはe☆イヤホン全店で取扱い&試聴機展示がございます。
お立寄りの際にはぜひ、チェックしてみて下さいね!
お相手は大先生ことクドウでした。それではまた次回。
※記事中の商品価格・情報は掲載当時の物です。