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e☆イヤホンのりょう太です!

 

FitEar × FOSTEXのコラボで誕生したカスタムIEM、FitEar Air。

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今までのFitEarカスタムとは少し違った雰囲気のAir。

FitEar Airは、須山補聴器のFitEarブランド初のハイブリッド型カスタムIEMです。

 

ここで言うハイブリッド型とは、ダイナミック型ドライバーとバランスド・アーマチュア型ドライバーを異種混合した方式を指します。それぞれの方式の特徴を生かしたサウンドデザインが可能となりますが、反面複雑な構造になるためチューニング含め開発が難しくなると言われています。

 

 

FitEar Airの構造を語る上で、外せない二つの大きなポイントがあります。


 

・FOSTEX製ドライバーユニット「382326」との出会い

・ベントの代案として「ショートレッグシェル」を開発し問題をクリア


 

FitEar Airの発表会レポの記事でも説明しています。

◼︎リンク:【秋のヘッドフォン祭】須山補聴器初のハイブリッド型「FitEar Air」がFOSTEXとのコラボで誕生! | eイヤホンのブログ

 

 

◼︎FOSTEX製ドライバーユニット「382326」との出会い

自身が思う最高のハイブリッド型カスタムIEM生み出すべく、必須となる「高品質なダイナミック型ドライバー」を「品質を安定的に供給可能」で「カスタムIEMにも搭載が容易な小径なもの」で探していた須山補聴器の須山社長は、ある時理想的なダイナミック型ドライバーと出会います。それがFOSTEX、正確には母体であるフォスター電機の9mm径ドライバー「382326」です。須山社長はこのドライバーと出会ってから実に5年の歳月を掛けてFOSTEXを口説いたのだとか。その甲斐あってFitEar Airの製品本体、公式HPや販促物には正式に「Powerd by FOSTEX」の文字が入っているのです。

 

 

◼︎ベントの代案として「ショートレッグシェル」を開発し問題をクリア

極めて密閉されたカスタムIEMのシェル内部でダイナミック型ドライバーをなるべく制約なく動作させるため、他社のハイブリッド型モデルでもよく採用されているのがベントと呼ばれる空気穴。簡単に言うと「BA型はもともと密閉空間内でも動作しやすいように作られているけど、ダイナミック型ドライバーの振動板を動かすためにはそれなりに空気の量が必要なので外から空気を取り入れるための穴」がベントです。

しかし、ベントは遮音性の低下や音漏れを発生させる原因にもなりうる要素であるため、FitEarがハイブリッド型を開発するに際して掲げた「外出先での利用を前提に高い遮蔽性とそれによる音楽鑑賞環境の提供」に反する!と代案を考え抜いた結果生まれたのが「ショートレッグシェル」という考え方です。

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左上:FitEar MH334 右上:FitEar Air 左下:Unique Melody MAVERICK 右下:ONKYO IE-C2

上の画像を見るとわかるとおり、左上のMH334に対して右上のAirはシェルの先端部分が途中でスパッと切断されているように見えないでしょうか?これがショートレッグシェル構造。こうすることで、外部から空気を取り入れる代わりに、予め耳の中に空気容積を多く確保することでダイナミック型ドライバーの動作に必要な気圧を維持するという逆転の発想なのです。うーん柔軟な発想。

 

この構造、実は「装着感が楽」という副産物的恩恵もあり、須山社長によると他の機種にも採用できるかもしれないそうです。確かに他のFitEarカスタムと着け比べてみても耳穴の比較的浅い位置で蓋をするような構造なので、耳の奥まで入ってくることがなく楽な気もします。最近はカスタム慣れしてしまっている自分にとっては、かえって新感覚でもあります。

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完成品では、音導管が二つということもあり「豚の鼻」っぽさが際立つショートレッグシェル構造。

 

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フェイスプレートは6色から選択可能。ダイナミック型ドライバーの供給元、FOSTEXのコーポレートカラーであるオレンジがシンボルカラーとされています。

 

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Ayaと同じく3Dプリンターで出力されたシェルを採用している。

 

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左シェルの内側にFitEar、右シェルの内側にPowerd by FOSTEXと印字されている。

 

▼メインはダイナミック型、超高音域をBA型で。

AirはFOSTEXのダイナミック型ドライバーをフルレンジ(全帯域を再生するスピーカー)として、BA型ドライバーをスーパーツイーター(超高域再生用スピーカー)として配した構造になっています。つまり、メインはダイナミック型のドライバーで、BA型はサブとも言える役割。この構造をとる上で、今までBA型ドライバーを主に扱ってきた須山補聴器としてはFOSTEXの協力は必要不可欠だったことでしょう。最初自分の中では「ドライバーの供給元だからというだけでわざわざ表記までするかな?」と思っていましたが、逆に考えればAir開発の過程でPowerd by FOSTEXと表記するほどの関係性が形成されたと、ここで合点がいきました。

 

 

▼FitEar的ハイブリッド型のサウンドとは。

ハイブリッド型カスタムIEMと言えば、以前レビューしたUnique MelodyのMAVERICKを思い出します。MAVERICKはダイナミック型ドライバーを低域用のウーファーとして搭載した構造で、BA型を高域に2基、中域に1基、低域にも1基とかなりの充実っぷり。

◼︎参考リンク:「唯一無二を目指した」MAVERICK CUSTOM作ってみた! | eイヤホンのブログ

Airの構造に関する詳細は不明なので、「FOSTEX製ダイナミック型ドライバーを最低でも1基搭載している」ことと、「BA型ドライバーを最低でも1基搭載している」ことしかわかりませんが、MAVERICKもAirも等しくハイブリッド型であることに変わりはありません。無論、ダイナミック型ドライバーを低音域を鳴らすためだけに搭載した4way構造のMAVERICKと、ダイナミック型ドライバーで全音域を再生し、超高音域の補完のためにBA型ドライバーを使った外見上おそらく2way構造のAirがどちらも形式上等しくハイブリッド型構造と呼ばれていても、もちろん同じような音という訳ではありません。

 

Airの音、一言で表すと「太い音」です。これまでのFitEarブランドのどのモデルとも似ておらず、突然変異的に現れた正にイレギュラー。そりゃあ内部構造からシェルの作りまでまるで違う訳ですから、音も違って当然なのですが、それにしたって思い切った音作りになっていて、ちょっと偉そうな表現になってしまって恐縮なのですが、なんだか変貌っぷりにまず関心してしまいました。

今までBA型ドライバーだけを使ってきたエンジニアが、突如ダイナミック型ドライバーをフルレンジとして採用するなんて、余程そのドライバーを信用していなければ出来ないことだと思うのです。もちろん、須山社長がそれまでに培ってきたノウハウ須山社長は既製品のイヤホンを破壊して内部ドライバーを取り出しては日夜色々と実験されているそうな…があってこそとは思いますが…。

 

そんな「太い音」がするAir、今までの音の志向と全く異なるものに出来た理由に「リスニング用と割り切った」点も挙げられると思います。プロ用イヤモニとしてはショートレッグシェル構造ですら受け入れられない構造でしょうが、それもリスニング用として購入するユーザーにとってみれば「耳に浅く挿すだけで遮音されるならその方がよくない?」とポジティブに受け止められるはずなのです。

 

音の立ち上がりは既に愛用している同社のMH334やAyaと比べるとややゆったりとしていて、ふわっとした印象。キレはやはりBA型メインのモデルには劣ります。逆に言えば空気感や余韻があって心地よく聴こえるのです。低音域が支配的で迫力のある音ではありますが、ガチガチに情報量を追求した緻密なサウンドとは異なります。同社のダブルウーファーモデルMH335DWのようなモニター用としての低音域追求ではなく、あくまでも観賞用としての楽しい音の表現。例えるならば、スタジオのモニタースピーカーから鳴る音ではなく、ライブハウスなどで聴く肌にビリビリきて、お腹にズンズンくる音、キャラクターとしてはそれに近いのではないでしょうか。ライブを見ていると、普段楽曲のみと向き合っている時と違い、ステージ上の奏者の動き、会場の空気感など全ての情報を五感で感じて「エモい」気分になりますよね。もちろんAirにはそういったライブ会場で感じる音以外その他多数の情報を再現する能力など持ち合わせるはずもありませんが、少なくともダイナミック型ドライバーならではの音圧感、もっと抽象的に言えば耳の中の空気の動きがライブで感じるような臨場感の演出に繋がっているのでしょう。自分がライブ通いしているお気に入りのアーティストがいる方は、それを聴いてみるのがいいでしょう。特にライブで定番になっている曲ならなおよし。

 

高音域用のBA型の働きはメインとなるダイナミック型のサブ的役割とは言えど、フルレンジドライバーでは伸びきらない高音域の補完に大いに役立っています。FitEar Air発表会時のスライドショーでは、だいたい6,000Hzあたりの位置にクロスオーバーがありました。実際に音を聴いても繋がり自体はかなりナチュラルで、それでいてハイハットの音はBA型らしいより金属的でシャキっとした鳴り方をしています。これまた今までのモニタリング用途の機種と比べると良く言えばアグレッシブに、悪く言えば少し粗雑な印象な鳴り方なのですが、それでこそメインのダイナミック型ドライバーとの調和がとれていて、気持ち良く音を楽しむことができます。

 

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もちろん坂本真綾さんの最新アルバムFOLLOW ME UPを聴いてもエモい。

既にオーディオが「分析的に聴く」ことになっている方にとって、音の精密さや再現性というのを求めてしまいがちではありますが、Airを聴くと改めて音楽は「音を楽しむこと」だと認識できました。

 

流行りのハイブリッド型でありながらも柔軟で新しい設計志向で生み出されたFitEar Air。FitEarとFOSTEXが運命的な出会いを果たしたように、あなたもこの新しいサウンドとぜひ、出会ってください。

 

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