注目のイヤホンTechnics EAH-TZ700の開発秘話に迫る!      


hamachan

e☆イヤホンのはまちゃんです!

 

ポタフェス ⼤阪2019で参考展⽰され、2019年11⽉15⽇に発売されたTechnics初のハイエンドイヤホンEAH-TZ700。磁性流体を用いたドライバーと、異種金属を採用したハウジング、期待の超新星イヤホン。その開発者インタビューをお届けいたします!

 

Technics EAH-TZ700 【店頭販売のみ】

 

【11/15発売】Technics 待望のイヤホンがついに登場! EAH-TZ700

 

 


 

 

Technics(テクニクス)とは?

Technics(テクニクス)は、パナソニック株式会社(旧・松下電器産業株式会社)の音響機器向けブランドです。

 

1965年発売のスピーカーSB-1204のペットネームTechnics 1で初めて用いられました。2010年に主力製品だったTechnics SL-1200Mk6が生産終了となり、一部のアクセサリを除きブランドとして一旦終息しましたが、2014年より欧州および日本において再び展開されています。

 

1980年代以降はレコードプレイヤーのTechnics SL-1200シリーズが、クラブDJ用機材としてデファクトスタンダードとなっていました。

 

Technicsは、DJの文化においてはとても重要なブランドであるとともに、スピーカーの名門です。

 

 

パナソニック株式会社 アプライアンス社にお伺いしました

 

パナソニックの本社は大阪の門真に居を構えています。今回はその付近にありますパナソニック株式会社 アプライアンス社にお伺いしました。

 

 

インタビュースタート

 

ハードウェア開発部 主幹技師

小長谷 賢(おばせ さとし)さん

 

 

――本日はよろしくお願いいたします!まずは自己紹介をしていただけますか?

 

 

小長谷さん

小長谷です。音の入口と出口の部分であるアナログプレーヤーのカートリッジ、またはスピーカーに携わりたいと、テクニクスブランドを展開する当時の松下電器に入社しました。当時はパナソニックではなく松下電器ですね。長年、CDの光ピックアップの開発に携わり、その後、願いが叶い、音響要素開発にも関わることができました。

 

しばらく音響から離れていましたが、2014年にテクニクスが復活するということで、テクニクス復活と共に、私もオーディオの部門に復帰しました。

 

今回、イヤホンといった精密メカニズムを開発するということで、これまでに仕事をしていた一番信頼のおけるメンバーで開発を行っています。

 

 

――復活したテクニクスの開発メンバーは、もともと開発に携わっていた方々なのでしょうか?

 

 

小長谷さん

今のメンバーは、ブランド休止前の開発に携わっていた人間と、テクニクス復活に際してぜひ参加したいと名乗りを上げた新たなメンバーで構成されています。新旧混ざりながらという顔ぶれです。

 

テクニクスは、⾳の入口のアナログカートリッジ、プレイヤー、アンプ、スピーカーに至るまで、音を出すことに関するすべてをやる、というのがテクニクス製品の領域でした。

 

そのため、テクニクスの技術者には、本当に幅広い人材が揃っています。音を出すということのすべてを知ってるというのが、テクニクスが由縁ですから、そういったメンバーが集まっていると思っていただいて結構です。

 

 

――イヤホンの開発に至った経緯はどういったものだったのでしょうか?

 

 

小長谷さん

やはり多くの人に使っていただける製品を作りたい、という思いがありました。

 

 

 

 

小長谷さん

私自身、電車で通勤しているのですが、近年かなり多くの人がイヤホンを使って通勤されているところを見かけます。「多くの人に使っていただけるオーディオ製品」は何かと考えると、やはりイヤホンなんじゃないかなと。

 

 

――なるほど。確かにここ数年で爆発的にイヤホンの需要が高まったように思います。

 

 

小長谷さん

10年ほど前から、研究所で『小さなスピーカーでもいい音を鳴らせないか?』というテーマがありました。その当時は特にイヤホンに特化して……ということではありませんでした。それから約6年後に、研究が再開するタイミングで、ちょうどテクニクスイヤホンとして私が参画しました。

 

EAH-TZ700に搭載されているドライバーの、試作品の音を聴いてみた時に、「音としての完成度はまだまだ」といった感じだったのですが、今までに聴いたことのない音が聴こえると直感しました。

 

このドライバーであれば、「テクニクスのイヤホン」と言っていいものが作れるのではないか。いい音にならないはずがない。いや、絶対すごい音になる!と思い立ったのが、このイヤホンEAH-TZ700のスタートですね。

 

 

――もともとの研究、いわば財産のようなものがあってこその新開発だったのですね。

 

 

小長谷さん

そうですね。研究所が成果をまとめるのと、事業部がテクニクスブランドを再開するタイミングがちょうど良く合った、とういのもあったのだろうと思います。

 

 

――開発スタート時の想いはどのようなものだったのでしょう?

 

 

小長谷さん

ひとことで⾔えば、やる限りは1番のものを作りたい。それが完成すれば、それを望む⼈に届けたい、という思いですね。

 

 

業界初、磁性流体を用いたダイナミック型ドライバー 

――先日のポタフェス大阪のタイミングで、「テクニクスがイヤホンを出すらしい」と、僕も情報だけはいただいておりました。「どうやらテクニクスが凄いドライバーを作ったらしいぞ」と。

 

【#ポタフェス 大阪2019】Technics EAH-TZ700 日本初出展!

 

――実際に聴いてみて、「いったい何なんだこれは?!」と驚きがありました。EAH-TZ700について一番大きな特徴は何でしょうか?

 

 

小長谷さん

イヤホン用のダイナミック型ドライバーとして業界で初めて磁性流体を用いたことです。

 

 

 

 

小長谷さん

磁性流体を使ったからこの音になる、というわけではありません。磁性流体以外にも数多くの技術が投入されていますが、磁性流体を⽤いたこのドライバーが、EAH-TZ700の核であることは間違いありません。

 

EAH-TZ700のドライバーは「プレシジョンモーションドライバー」と名付けました。「プレシジョン」というのは正確、精密という意味です。

 

ボイスコイルとマグネットの間に磁性流体を充填しています。役割としては2点の作⽤があり、ひとつは、ボイスコイルと一体となった振動板を⽀え正確に上下動作を行う役割。そしてもうひとつは、エッジを柔らかくすることができる、という点です。

 

 

 

 

小長谷さん

箱に入っているような据置き型のスピーカーの場合は、ダンパーという⽀える部品が、エッジ以外に存在します。つまりエッジとダンパーの2箇所で⽀えている状態です。一般的なイヤホンのダイナミック型ドライバーは、振動板とボイスコイルをエッジの1箇所で⽀えています。

 

スピーカーの専⾨家からすると、このようなイヤホンのドライバーの構造は、正しく動作しているのか、厳しい⽬線で⾒れば疑問です。

 

プレシジョンモーションドライバーでは、ボイスコイルが磁性流体の表⾯を沿ながら上下するように、磁性流体とエッジの2箇所で振動板とボイスコイルを⽀えています。そのため、振動板の上下の動作をより正確にすることができます。

 

一般的には磁性流体の作⽤としては、放熱の効果も見込んでスピーカーに採⽤されていますが、イヤホンはほとんど熱が出ません。EAH-TZ700では、振動板に正確な動作をさせるためのみの構造で磁性流体を採⽤しています。

 

液体ですのでほとんど抵抗がなく表⾯を滑る様に動作します。その結果、これまでのドライバーでは得られない全帯域での超低歪を実現しています。

 

そして次に、EAH-TZ700では、磁性流体の⽀えがあるため、エッジの部分を柔らかくすることができます。これは、スピーカーの⽤語でハイコンプライアンス化といいます。

 

 

――ハイコンプライアンス化とは、どのような効果があるのでしょうか?

 

 

 

 

小長谷さん

ハイコンプライアンス化とはエッジをしなやかに、柔らかくすることで⾶躍的に低域を伸ばすことができることを指します。通常のイヤホンでは、振動板の上下動作に伴い発生するローリング動作を抑制するために、エッジはある程度の硬さが必要です。そうしなければ振動板の上下動作が安定せず、大きな歪みが発生してしまいます。

 

プレシジョンモーションドライバーでは、磁性流体を採⽤することで、エッジを柔らかくし、低⾳を伸ばしつつ正確な動作が得られるというわけです。

 

従来のイヤホンで重低音をアピールしようとする時は、低域に近い特定の帯域にピークを作って、「低音感」を演出するのですが、EAH-TZ700では、そういった演出はありません。動作的に重低⾳域まで達しているからです。

 

テクニクスは⾳に対する考え⽅に、原理的に性能を出した上で、はじめて⾳を作っていくポリシーを持っています。

 

私は、スピーカーで音楽を楽しむのが趣味なのですが。ある意味では従来のイヤホン、ヘッドホンを超えただけでなく、スピーカーでも出せない。理想の⾳に仕上がったと思います。

 

 

特殊アルミ振動板

――採用されている、特殊アルミ振動板とはいったいどういうものなのでしょうか?

 

 

 

 

小長谷さん

テクニクスの高音用スピーカーで使っている、我々としては慣れ親しんだ素材です。

 

イヤホンのドライバーは⾮常に⼩さいので、通常はエッジと⼀体のフィルムを⽤いた振動板を使うことが多いです。たとえば樹脂フィルムの振動板であれば、振動板⾃体が分割振動をして付帯⾳を⽣み出してしまいます。

※分割振動:イヤホンやスピーカーの振動板が全体で均一に振動せず、分割されているようにたわみながら振動してしまうこと。

 

この特殊アルミ振動板で発⽣する付帯⾳は、金属である剛性に加え、振動板の形状や厚みを調節して、はるか可聴領域外に追いやっています。

 

 

アコースティックコントロールチャンバー

――「アコースティックコントロールチャンバー」についておきかせください。

 

 

小長谷さん

アコースティックコントロールチャンバーとは、ドライバーにおいて空気のコントロールをする部分です。先ほどまでの、低域と⾼域に加えて中⾳域を含めた全帯域をコントロールしています。パナソニックブランドのイヤホンでも、ここまでのコントロールチャンバーは搭載しておりません。

 

EAH-TZ700が超低域から超⾼域まで幅広いレンジだからこそ、癖のない自然な音とするためドライバーを含めた、その前後の空気室の流れを三位⼀体でコントロールしています。

 

 

 

 

小長谷さん

シミュレーションで空気のコントロールと、音圧のピーク(膨張)・ディップ(減少)をなくす計算をしました。さらに、実際に聴覚でも確認し、空気の流れがスムーズになっているか調節しています。設計をする中で、なるべくは筐体を⼩さくしたいという考えはありますが、まずは音質を最優先して調節をしていきます。

 

 

――確かに、EAH-TZ700の筐体は非常に小さい印象があります。

 

 

 

 

小長谷さん

チャンバーは、大きければ良いというものではなくて、最適な大きさがあります。開発を進めていくうちに、それが意外と小さいということがわかりました。ドライバー単体の性能が高いということもありますが、性能が⾼いがゆえに、エアーコントロールはとても重要な要素です。

 

 

――大きいほど音質的に有利になるのかと思っていました。

 

 

小長谷さん

イメージとしては、そうですよね。しかし、私が最初に想定していたものよりも3割ぐらい⼩さいものに仕上がりました。これは装着性にも貢献できています。

 

 

――超高域の再生も可能になったドライバーとのことですが、高域といえばダイナミックドライバーよりも、バランスド・アーマチュア型(BA型)を搭載したモデルの方が良いのではないか?とも思いました。

 

 

小長谷さん

BAは再生できる帯域がどうしても狭いですね。逆に⾔えば、帯域を絞り、複数のBA構成にすれば出せなくはないと思います。ただ、スピーカーの理想というのはひとつのところから音が出る点音源なんですね。本機で各種のパーツを同軸上に配置しているのは、よりこの理想状態に近づけたかったからです。

 

超高域まで伸ばしているプレシジョンモーションドライバーでは、⾼域部分の可聴帯域外の⾳も、音場の雰囲気や空気感、自然に聴こえる微妙なニュアンスを表現するのに貢献しています。

 

異種金属を組み合わせた独自のハウジング構造

――EAH-TZ700のハウジングには異種金属が採用されていますが、どのような狙いがあったのでしょうか?

 

 

 

 

小長谷さん

異なる種類の金属を組み合わせて採用した理由は、素材に起因する固有の振動を1種類に限定しないという狙いがあります。複数の素材により、固有振動を打ち消し合うイメージです。

 

ドライバーを抱えているポートハウジングは、チタン削り出しのものです。黒く表面コートをしていますが、これは超高強度の表面処理です。また全体を覆っている本体ハウジングは、マグネシウムのダイキャストです。マグネシウムというのは、振動を吸収するという性質もあります。

 

このように筐体構造として高剛性で不要な振動の発生を排除しています。ちなみに内部にあるアコースティックチャンバーはアルミの削り出しです。結果、異種⾦属を組み合わせで固有の⾳を出さない、筐体での⾊つけもしない、ということに成功していると思います

 

 

――1種類の金属で筐体を作ったイヤホンとはどのような違いがあるのでしょうか?

 

 

小長谷さん

最初はアルミの削り出しで試作をしてみました。その後、異種金属を用いたハウジングと比較したところ、⾳が極端に変化する訳ではなく、⾳のフォーカス感が向上したという印象でした。あくまでも、ドライバー性能を発揮させるための舞台という感じです。本当に実質本位で作っています。

 

 

ハウジングの形状に関して

――ハウジングに関する工夫はどのようなものがあったのでしょうか?

 

 

 

 

小長谷さん

イヤホンというのは⾝につけるものですので、装着時に違和感があったら⾳楽に集中できないと思います。音に関しては、同軸上に配置したドライバーが、音に最適な角度で⽿に⼊るように造形し、同時にフィット感を向上させています。

 

⾳のために⽿が痛くなったり、本体が重くて装着感が悪いといったことのないように、ここは入念に設計しています。良い音と同時に、装着感に関しても妥協なく、⻑時間の⾳楽鑑賞でも疲れないものとし、理想的としては、着けていることを忘れるほど、というものを⽬指しています。

 

 

 

小長谷さん

シンプルな形状にすることで、ある程度の自由度も確保しつつ、軽くすることで装着後のズレを軽減することができます、またイヤホンの大きさと重さにもこだわっています。

 

チタンは高硬度なので、スマートな形成できます。量産に耐えられる様な強度も兼ね備えています。

 

イヤホンに込めた想いや、狙い。

――EAH-TZ700には、どのような想いを込められたのでしょうか?

 

 

小長谷さん

これまで、音の入口から出口までの開発に携わってきて、音の感動というものを経験してきました。今回、その感動を再現できるものとして、EAH-TZ700を開発しました。

 

このイヤホンを使っていただく方それぞれに、音楽の新たな感動を感じ取っていただけることを願ったものです。また、多くの若い方にもテクニクスを知っていただければと思います。

 

 

――最後に、読者のみなさまに向けてメッセージをお願いします。

 

 

 

 

小長谷さん

EAH-TZ700の開発、生産にさしあたって、パナソニックの精鋭メンバーが集結しました。ドライバーは岡山津山で、本体は佐賀鳥栖で、ほとんど手作りで、皆この音を届けたいとの思いです。メイド・イン・ジャパンの⼒を集めた結晶として、より多くのお客様にお届けしたいと思います。

 

 

――素晴らしいメイド・イン・ジャパンの力が集結した逸品だと思います!私自身もEAH-TZ700の素晴らしい音をより多くのお客様にお聴きいただきたいと願っています!

 

 


 

今回は、貴重なお話をありがとうございました!

 

 

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Technics EAH-TZ700 【店頭販売のみ】

 

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