皆さんおはこんばんちはー(。・ω・)ノ゙
e☆イヤホン東京秋葉原店に出張中のりょう太です!
注目アイテムを”企画した人”に、直撃インタビュー!
パイオニア企画部
林 佑二さん
この冬話題のポータブルヘッドホンアンプ「XPA-700」を企画したその人です。
製品の発表会、オフィシャルムービーにも登場する、XPA-700の仕掛け人とも言える人物です。
今回、そんな林さんにわたくしりょう太が直撃インタビュー!
1時間超にもおよぶインタビューをまとめたら…
10,000文字オーバーになってしまいましたごめんなさい。
超長いです。覚悟してください。
かなり読み応えのある内容ですので、お時間のある方はじっくり読んでください。きっとXPA-700の魅力が伝わる内容になっております。
文中
R=りょう太
H=林さん
R:XPA-700、パイオニアとしては初のポタアンなのですが、このタイミングで出そうという流れになったのはなぜなんですか?
H:私はもともとホームシアターとか、単品系をやってたんですけど、個人的には3年ぐらい前からポタアンはやりたいなーって思ってて、ただ会社はそれに対して当時は否定的で、まずは会社を説得するところからかなって思ってました。
今の部長が、もっと狭いところ(ニッチなところ)に突っこんでいった商品をやらないと、今これだけたくさんの商品が世に出回ってるんだからしょうがないって言う人だったので、うまいこと言ったらやらせてくれるんじゃないかな?と思って。話をしたら、一週間ぐらいあげるから資料をまとめてみてって言われて、別にやる訳でもないのに以前からまとめてた資料があったのでそれを整理しながら自分がポータブルオーディオを18年とかやってるんですけど、それで自分がどういう機材を、何年何日に、幾らで、何を目的に買ったとか、それに対して良かったのか悪かったのかを書きだして、その中からどういうポータブル機器を目指したらいいのかなーってところを導き出して、こんな感じですって。
あとはお客様(ユーザー)がこういう方々で、聴いてる音楽ってこんなんじゃないかな?っていう情報をまとめて、きっとこういう世界観ですよと。そしたら部長が確かにそれはありそうだなと。そこからもうちょっと動いても良いと!と。単純に言うと、「私がやりたかった」ってことです(笑)
R:林さんがポータブルオーディオをお好きだという事は音展での発表会を見ていても感じたところで、むしろ「自分が(ポータブルオーディオを)好きな人なんだな」ってところがまず強烈で、発表会の内容としては、これだけ自分で仕事としてももちろんですけど趣味でも好きな人が、本気で企画開発をしたらどうなるのかと。そこのひとつの答えじゃないかと思ったんですけど、林さんがポータブルオーディオに自分の趣味として目覚めたのっていつ頃なんですか?
H:私自身は高校の終わりぐらい、18年、もう19年ぐらいかな?前に目覚めました。
R:それはやっぱりイヤホン・ヘッドホンから始まったんですか?
H:もともとイヤホンです。
R:その時はもちろん、まだパイオニアに勤めてたりは…
H:ええ、まだ高校生でしたので。
R:ではこの業界に入られるよりもずっと前からポータブルオーディオがお好きだったんですね。
H:家で、マンション暮らしなんで、コンポは持ってましたけど鳴らすと親が「うるさい!」って言うもんですから、家では全然聴けなかったんですけど、通学の時はずっと聴いてましたよ。
R:ということは(XPA-700を)作るべくして作ったっていう感じですね(笑)
H:そうなってきますね(笑)
R:XPA-700って、発表会でも感じたんですけど、大手のメーカーさんの製品、万人向けっていうよりもパッと見で「特化型」というか、どういう方々に向けて開発されたかが明確化されている印象がありましたが、つまるところどういう方々に向けた製品なんでしょう?
H:例のターゲットの資料を見てもらうとわかるんですけど…発表会の時のやつより項目増えてて、発表会では時間の都合上端折ったりしてて…
R:えっ…発表会あれで短くしてたんですか!?(笑) (かなり内容の濃い発表会だった)
H:あーいやいや、三項目ぐらいしか減らしてないですよ(笑)
R:(笑)
H:で、普通のことから(資料の項目上から)入って、モノ的ガジェット的な話になって、最終的にはコンテンツの話なんですよね。で、ここで「クスクス」って思ってもらえるような人がターゲット。基本的には5つ以上って書いてますけど、多分ほぼほぼ全部に当てはまる方こそターゲット、「わたしと同じ人」と言えるんじゃないかなって(笑)
R:なるほど(笑)
H:平たく言うと、オーディオオタクというか、サブカルオタクというか、そういう方々が主なターゲットなのかな?と思っています。
R:他社のポタアンと比べると、角ばったようなデザインですが、こういうデザインに関しても企画の林さんの意向なんですか?丸々?
H:わたしはわたしの感覚で、万人的な感覚ではないと思っていて、自分の職権濫用で製品が売れなかったらまずいので(笑)
R:なるほど(笑)
H:デザイナーにこういうのを目指してます、お客様はこういう方々ですということは伝えて、「冷たくて重い」とか、「ミリタリー感」「業務用みたいな」というイメージを伝えて、普段自分で収集していたガジェットとか車とかの画像を投ました。で、何種類か上がってきた中で更に社内調査で絞り込んだりしました。なので私が手書きしたものをこれで、とかした訳ではなく。
R:僕の中でXPA-700はパイオニアさんの製品の中でもデザイン的に一際異彩を放ってて、ミリタリー的と言うか、ゲームで言うとメ○ルギアソリッドに出て来そうなデザインというのはパイオニアさんの中ではほぼ唯一じゃないかな?って思うんです。
H:そうですね、どちらかというとシンプルでシンメトリーなデザインが多いですね。
R:その中でも無骨で男的なデザインですよね。
H:そこは仮説的に「こういうのが好きなんじゃないかな?」って。企画時のキーワードにも「無骨」っていうのがありましたし。
R:完成した製品ではありますけど、市場に対しての「こういうのどう?」っていう投げかけでもあると。なるほど。
R:今まで聴いた方、触った方々の反応ってどうでした?
H:あー、やっぱりニヤニヤして触ってる方が多かったです(笑)
R:ニヤニヤですか(笑)
H:まず、(試聴会等で)10分ぐらい並んでいらっしゃって、何と言うか「好きそうだなー」って。で、持った瞬間やっぱり重く感じると思うんですよね。軽く感じるものと、重く感じるものとあると思うんですけど、XPA-700は写真写りよりも重く感じられたみたいで、喜ばれましたね。
R:え、じゃあどちらかと言うとイメージ的には軽い物の方がポータブルですしいいはずなんですけど、持った時に適度な重厚感があることに、逆に好印象を持たれると?狙い通りですか?
H:そうですね。削り出しで作ってて、(外装が)厚いところだと2mm以上あります。やっぱり我々は他社に比べて最後発で出すので、ほぼお客様が(他社のポタアンを)持っている状況で出しますから、「あ、こういうのも手持ち機種の中にあってもいいかな」って思っていただけるデザインにしました。あんまり軽くて安っぽくても、値段が5万6万するものなので、安っぽいとは思われたくないですし。
R:軽すぎると確かに買う側からすると不安になったりしますからね。
XPA-700は入力が豊富な製品ですが、試聴の際は何を接続する方が多かったですか?
H:んー、試聴会ではAK(iriver Astell&Kern)が圧倒的に多かったですね。
R:既に高音質プレイヤーを持っている方が更に底上げって感じでしょうか?
H:そういう方も多いですね。やっぱりもともとスマホとかを使ってる方でも、内蔵ストレージの容量が足りないとかで後々単体のプレイヤーに乗り換えることも多いと思うんです。そういう時に、iPhoneとかとも使えるし、後々ステップアップした後のプレイヤーにも使える。一年二年使うだけじゃないと思うんですよね。ケーブルも、もともと使ってたものとか繋ぎ方を変えたりとかあると思うんですけど、そういう流れで使ってたケーブルが繋げなくなるとかが嫌なんで、色々カスタマイズして長く使える、試してもらいたいっていうためにバンパーとかもつけてます。
R:これ、バンパーが脱着できるとかすごく珍しいですよね。バンパーを搭載してるだけのポタアンは他にもありますけど。
H:こんな感じで色々ついてます。これ、バランス端子を搭載するにあたって、本当はバランス出力をフロントに持っていきたかったんですけど、サイズの都合とかもあってリア側に搭載せざるを得なくなって。で、入力と出力のケーブルが上下になるのは嫌なんですけど、何とかバランスケーブルを上に持ってこれるようにとか…。
R:なるほど!リアバンパーの出っ張りがなんでそんなにあるのかと思ったら、バランス端子を守るためだったんですね!なるほどー。これもう完全に開発者が自分で使うためとか考えて設計してますよね(笑)
H:で、あとフィックスのラインアウトを搭載してて、既に皆さん持ってるポタアンがありと思うんですけど、それも使えた方がいいなーと。で、それと繋ぐときに配線をしやすいようにとか。で、この製品に付属してるケーブルとかには全然役立たないんですけど、世の中に出回ってる色んなケーブルも使える様にと。で、バンパーの組み合わせによって「ここ通せるぞ」とか、気付いてほしいんですよね。考えて作られてるぞーって。
R:表現が正しいかはわかりませんが、知育玩具の様な、考えさせる構造ですね。
H:そうですね、使い込むと色々な姿が見えてきます。実際、デザインが上がってきてから私個人的に30か所ぐらい修正出してますし、世の中にある色んなケーブルとかポータブルオーディオに関わるものがなるべく使える様な可能性を残したいなって。例えばベン○ャークラフトさんのシリコンベルトとかって皆さん持ってると思うんですけど、ここに丁度はまったりとか…
R:え?どこどこ?…あー、あー!!!!(笑)
H:こことか、もともとのデザインでは7mm幅だったのを9mmにしてもらったりとか。
R:ベルトのためだけのスペースなんですね。
H:プレイヤーによっては画面の上通っちゃうのを逃がす可能性を残しておきたいなと。ミリ単位で色々やってます。
R:現状ある様々なポータブルオーディオに関わるアイテムとの相性とかまで考えられてると…。
H:そうです。
R:ここまで考えてる製品ってあんまりないんじゃないですかね。普通は「この製品」と「この製品の付属品」だけで完結、っていうようなものが多いと思うんですけど、そうじゃなくて、最後発だからこそ既に構築されたユーザーさんの環境を壊すことなく、入って行けるようなと…。なるほど。最初キャッチコピーの「NO RULE」って言葉を聞いて、逆にすごく独自性の強い製品と思ってましたけど、今の話を聞くとすごく柔軟なイメージがわきました。
H:そうなんです。「NO RULE」イコール制限がない、柔軟であるって意味なんです。
R:あ、なるほど。非常にキャラクターが強いけど、買った人の環境に柔軟に適応すると。そういう意味なんですね。
H:これって、お客様が自分で買って、自分だけで満足する製品なんです。他人に理解されないっていうか。だから、「NO RULE」ですよね。まぁ可能性は無限大でやっていただきたい。ポタアンって単体で完結しないじゃないですか。だからこれだけがカッコよくてもダメですし。プレイヤーと重ねやすいとか、見た感じに自分だったらどこから接続するとか、そういうのを妄想すると思うんです。そういう時に「なんとでもなるよね」って考えられて作られてることを感じてもらいたいです。
R:XPA-700って多機能じゃないですか。中でも「UP SAMPLING 192」「DIGITAL FILTER」「LOCK RANGE ADJUST」ってすごく詳しい方じゃないとわからない機能かな?と思うんですよ。この点、わかりやすく説明していただけますか?
H:一番分かりやすいのが「UP SAMPLING 192」で、96kHz、192kHzまでアップサンプリングできる機能なんですけど、音をいじりたくないって方も多いと思うので、スルー機能もついてます。この機能を使うと高音部が伸びるというかクリアな感じになります。
「DIGITAL FILTER」ですが、個人的には低音が好きなので低音をいじりたいって気持ちもあったんですけど、多分価格を考えるとそこはあまり求められてないなーって思ったので諦めて、でも音を時々変えてみたいとか、はいこれが完成された音ですよっていうメーカーの押しつけみたいなのは好きではないので、自分での調整を最終的に出来る余地を残したいと思って、「DIGITAL FILTER」を搭載しています。音をカチッとさせるのか自然なのか元気に前に出て来るのかを選べるようになってます。搭載しているESSさんのDACの機能としてシャープとスローで、我々の独自開発なのがショートです。ショートは音の立ち上がりが良いです。イコライザほど激変するものではないですけど、この価格帯を検討する方はそこまで劇的な音の変化は逆に好まれないだろうと。
R:そうですね、イコライザはプレイヤー側で調整するっていう方法もありますし。
H:で最後「LOCK RANGE ADJUST」。これ元々U-05って据置のUSB-DACに搭載していた機能です。この製品も(社内で)横から見てて「あー、あの企画マン変態だよなー」って思ってたんですけど、これって絶対メーカーがやったらいけない機能なんですよ。
R:えっ!?そうなんですか?
H:要は音が鳴った時って絶対ノイズが発生するんですよね。クロックなんで時系列で。タイミングが合わないと。で、それに対して(ロックレンジを)狭めていくと音は良くなるんですよね、ノイズが減って。ただ、狭めていくと音が途切れちゃうんですプツンプツンて。ロックが外れて。なのでメーカーとしては一番広げて出すんです。音が途切れちゃうと不良品ってことになりますし、品質管理の面で。
R:そうですよね、音質云々以前の問題になっちゃいますもんね。
H:ただ、そうすると「ゆとり」ができるので、この製品ではスイッチで狭めていってノイズを排除するんです。で、音が途切れる部分が出て来るんで、そしたら一つスイッチを戻すんです。そうすると音がクリアになってきて尖ってくるっていうか際立ってくるんです。こういう普段はメーカーが公開しないしないところをお客様に公開して、やっていただく機能なんです。
R:ということは、「LOCK RANGE ADJUST」はスイッチをNARROWにするほど良い音になるってことですか?
H:そうです。ノイズが減るので。
R:じゃあ、みんなNARROWで聴いた方がいいんじゃないかってことになりますよね?
H:ああ、192とか96ってサンプル周波数が高くなるとロックが外れやすくなるので…
R:あーつまり「もろ刃の剣」と言うか、NARROWにするほど音は良くなるけど、精度の部分で音の途切れも起こりやすくなると。
H:そうですね。だから本当は据置機に搭載されてた機能なので聴きながら変えれるじゃないですか。だから意味があって、ポータブルでは意味が無いかもって思ってたんですけど、ただ、やってみたらだいぶ音が変わりますし、家で使う時ももちろんですし、ある程度広いレンジで使っても変化があるし、「変わる」ってところを楽しんでいただきたいなーと。なのでこの三つを駆使して、楽しんでいただきたいです。
R:このXPA-700自体でイコライザゴリゴリの音の変化はないけど、かなり細かな所で音のカスタマイズ性はあると。
H:ええ。まずは重ね方とかケーブルとかの配線とかの判断。次は音は俺はこうして使うぞっていう判断。そうした自分の判断して使うってところにモチベーションがあると思うんです。
R:ちなみに林さんがよく使うスイッチの組み合わせってあります?
H:えーっと、わたしは「LOCK RANGE ADJUST」ややノーマル寄りの中間、「UP SAMPLING 192」は96kHz、「DIGITAL FILTER」はスロー。ドンシャリっていうか元気な音が好きなんですけど、音をチューニングしてる人間って「UP SAMPLING 192」はスルーにするでしょうし、人によって違ってくると思います。
R:じゃあ仮にXPA-700ユーザーオフ会とかを催したとしたら…
H:皆さんバラバラでしょうね。ケーブルとかも含め、俺はこのちょっと使いにくいパーツをこうやってうまくやりくりしてるよ、とか。
R:実際、聴く音源によって「UP SAMPLING 192」の使い方も変わるでしょうし。人それぞれですよね。
R:発表会の時、すごく印象的だったのが、アイウィル(アニソン系レーベルであるランティスの音楽制作部が独立した子会社)の佐藤 純之介プロデューサーが林さんのことを「この人ガチオタ」って言ってたのがすごく印象的だったんですけど(笑) 普段、結構アニソンとかはたくさん聴かれるんですか?
H:普通のJ-POPとかも聴きますけど、今iPhoneに入ってるのは7割ぐらいはアニソンかそれらに付随するアーティストの曲です。
R:林さんがXPA-700を開発する段階で一番参考にした、開発のリファレンス曲とかって、もちろん(開発関係者)皆さんそれぞれだと思うんですけど。
H:そうですね、開発に関わってる人間は何人もいるので。それぞれですけど。
R:林さん的にはどの曲でテストしてましたか?
H:いろいろあるんですけど…。ひとつはアレですよね、μ’s(ミューズ/ラブライブ!)の「Wonderful Rush」とか、「Snow halation」とか。
R:ラブライブ!ですね(鼻息荒い)
H:鉄板ですね(キリッ)
R:ハイレゾ版ですか?
H:そうですね。あとは、Kalafinaさんの曲で「sprinter」とか、まおゆう(アニメ)のオープニングのYOHKOさんの「向かい風」とかが最初のところだけで透明感がわかったりとか、あとfripSideさんの楽曲がどれだけうるさいんじゃなくて元気よく聴けるかとか、安田レイさんの「Best of my Love」とかも低音がすごいのでどれだけ心地好く聴けるかとか、上坂すみれさんの「七つの海よりキミの海」とか。それぞれに高音を聴いてみたり低音を聴いてみたり広がりとか、音数が多い中でちゃんと聴けるかとか。あと90年代のアニメをとかも収録方法が異なったりするので参考にしました。
R:もちろんアニソンを聴く方だけに向けられた製品ではないと思うんですけど…
H:もちろんそうですね。
R:アニソンって普通の音楽ジャンルとは違うものじゃないですか。先日たまたまかなり年上のアニメとか全然見ない方とたまたまアニソンライブの映像を見ていた時に「え?これもアニソンなの?」と言ってて、本人はアニソンってひとつの音楽ジャンルと思い込んでたみたいで、けどアニソンってカテゴリーであってもその中にいろんな音楽ジャンルの曲があるじゃないですか。
H:そうですよね、今すごく有名なJ-POPのアーティストでもアニソンを登竜門とした方もいますしね。
R:そういう風に考えてもアニソンってジャンルの中にも様々な音楽ジャンルがありますよね。僕がはじめてXPA-700を聴いた時に、当たり障りがないという意味ではなくすごく万能な音だと感じて、見た目とか、僕が感じてたコンセプト重視なイメージと音のギャップがすごくあったんですね。
H:試聴会でも仰ってましたね。
R:そうなんです、最初のブログにもそう書きました。だって、「タクティカル・アーマード」だし、「NO RULE」だし、「俺だけの世界へ」だから、すごいハードボイルドというか、独特な音なのかな?って思ってたら、そうじゃなくて、至極ハイファイで据置のDACアンプで鳴らしたような余裕のある音で、音質に関して本格的で妥協もなく、腰の据わった余裕のある音だったことに驚きました。音決めの時ってすごく時間かかりましたか?
H:そうですね。この製品ってもともと私がお客様にこう使っていただきたい、こういう製品を使って頂きたいって端子とかスペックを決めたりして、デザインはデザインで先に進んでて、大きさも色んなプレイヤーとの組み合わせとかを考えてた時に、最大限これくらいまでだろうって許される限界の大きさをデザイナーと設計に提出してるんで、そうすると内部の基板をかき集めるのが一番最後になっちゃうんですよね。すごい文句言われるんです。
R:え?それって普通そういうものなんですか?
H:いえ、ふつう逆です。
R:ですよね、普通はそうですよね。
H:こういう仕様になるんで、基板はこれくらいの大きさになって、音質を考えると端子の位置はここになって、電源の位置はここでって設計するんですけど、私はデジタルもこっちから入って、こっちから入ってフロントとリア両方から入ってるんですよ。アナログも出たり入ったりしてますし。
R:あー…(設計側からすると)つらい(笑)
H:なので、普通だと後ろから入って前から出て来る方が基板も書きやすいし、音も絶対良いと思うんですけど、ただこの入ってきて入ってきてって構造は基板の設計者に言った時には「なんでそんなことしないといけないんですか?」って言われました。ただそれはもうお客様にそう使っていただきたくて、鞄に縦に入れるものなので、そうやって使うからやってくださいと。かなり無理を押し通しました。なので、この大きさでこの仕様、端子やスイッチもたくさんありますし多機能なので、「音はもう知りませんよ」って言われたんですけど…まぁ言っちゃいますけどね(笑) いやいや、音は音なんで!ポタアン、音は音なんでやってください、って無茶を言って、何か腑に落ちない顔で帰って行った方も何人かいるんですけど…(笑) 色々やってきた中で、私も個人的には色々詰め込んでるんで、最悪出来上がった時にはノイズがチリチリ乗ってたりするんじゃないかって覚悟はしてたんですけど、最初に上がってきたワーキングサンプルがホワイトノイズすら乗らない地力のあるパワフルな音だったので、うちのエンジニアってすげーなって思いましたね。
で、それ何でかって多分、据置の42〜43cmぐらいの単体2chである程度空間と高さがとれる製品とかスピーカーもやってて、その一方でAVアンプっていうのもやってて、あれってあれだけ大きな図体なんですけどアンプが11個入っててたり電源もでっかいトランス積まれてたりアナログの入力系統も多いしで、デジタル部分のメインの心臓部分に割けるスペースってけっこう狭いんですけど、そこにHDMIにネットワーク系、USB、DSPとノイズだらけのものを詰め込んで、しかも音をキープしなくちゃいけないってことをやってる人間がたくさんいて、その人たちに登場してもらってるんです。
もしかしたら他のメーカーさんでは出来ない事をやってるのかもしれないですね。
R:じゃあポタアンとしては御社初の製品ではありますけど、これまでやってきた技術がしっかり息づいてるってことですよね。
H:そうですね。発表会ではESSのDACの使い込みだけの話になったんですけど、実際それだけじゃない技術がたくさん詰まってます。
R:DACだけで音が鳴るわけじゃないですもんね。
H:音源っていう話に戻すと、私はアニソンとかよく聴くのでその価値観で判断しますけど、ただそれだけの価値観で判断するとおかしなことになってくると思うんですよね。
R:ボーカルがーとかだけになっちゃいますよね。
H:クラシック聴く人は無視かい!とかなっちゃってそれは嫌なので、音のチューニング自体は普段2chのコンポーネントをやってる人たちがやってます。その途中途中で私もさっき紹介したような曲を聴いて、それがどう聴こえるかとかを確かめるような感じです。なので途中で高音の強さを抑えたいとか、エンジニアの方々の中ではあるんですけど、やりすぎると元気のない音になったりするのでギリギリまで上げてくださいとか、ノイズの話をしながら詰めていきました。そういう話をすればするほどちゃんと音に反映されるので、エンジニアの人たちってすごいなぁ。この狭い中でやれることは少ないはずなのにって。広がり出してくださいとか、高音を伸ばしてくださいとか言ったらできるのかーって驚きましたね(笑)
R:開発の中でもめたこととかってありますか?
H:外装のど真ん中にネジを一本増やしてほしいって言われたことがあります。
R:それは林さん的には嫌なことだったんですか?
H:四点留めでやってるからデザイン的にもカッコいいわけであって、真ん中にあったら嫌なんですけど、グランドをとりたいと。発表会でも話したクリーングランド設計なんですけど、デジタル部分とアナログ部分とDAC。この三つのグランドを共通にすることで電位差がなくなって音が良くなるって仕組みなんですけど、ちょうど真ん中らへんにあってですね、そこのアースをとってもらおうと思って基板の中で色々やってもらったんですけど如何ともし難いと。ネジ一発増やして筐体沿いでアースをとりたいって言われたんですけど…絶対嫌ですって言ってたんです(笑) ただ、それやらないともう音がどうにもならないぞって音質チームから脅されてて、デザイナーも嫌がったんですけど俺らが泣くか(諦めるか)!って言ってOKしたんです。
R:え、でも今ここにネジないですよね?
H:そうなんです。やってくれたんです。
R:解決…したんですか?
H:基板にジャンパーが付いてるんですよね。
R:あ、これ以前になんですか?って訊きましたね?
H:これがそうなんです。
R:あー、これで解決したんですか!
H:これで中を通して、跨がせてグランドへ持っていくって方法をとったんです。
R:これって、かなり後になって追加された要素なんですか?
H:もうほとんど基板を書き終えた後、音質チューニングをしてる時に。元々穴が開いてたんですけど、最終こっちに変えてくれました。かなり大きな設計変更だったと思います…。
R:じゃあ…かなり頑張ってくれたんでしょうね。ネジ一本を入れないだけのために(笑)
H:一本を入れない為に(笑)
R:すごいこだわりですね。
H:こだわりと言えば、普通、筐体の削り出しって、置くだけでコンピューターが全部オートでやってくれるものが多いと思うんですけど、多分これ(XPA-700の筐体)って置くだけでは出来ない箇所がたくさんあると思うんですね。だから何度も置きかえなきゃいけないぐらいのことをやってると思うんです。設計した本人も言ってましたけど…他社は絶対やりたがらない、って(笑)
R:(笑)
H:CADデータ見てもすごいことになってましたよ(笑)
R:じゃあこれじゃぜひ手に取っていただきたいですよね。
H:ローレット(筐体側面に施されてます)のところもそうですよね。普通ローレットってボリュームとか丸いところに入れると思うんです。平面に入れる技術ってあんまりないんですけど無理矢理探して来たり(笑)
R:こだわりの塊ですね(笑)
H:でも…一番大変だったのは会社を説得することでしたね。
R:それってでも最初の段階の話ですよね?
H:途中もありましたよ。まず身内を説得すること、課長、部長、営業部長、最終的には社長も説得しなくちゃならなくて。同じ話も何回もしました。ただなんか、お前楽しそうだなって(笑)
R:(笑)
H:お前が言うなら、なんか(言ってることが)合ってそうだからいいんじゃないって。最終的にはそこまで持って行けて良かったです。最初はお前の思い込みじゃないか?って言われてたんですけど。そこはイベントとかに私が行って、レポートを何十枚も書いて。そしたら確かにそうかもって思われ出して。途中社外の方に言われたのは、「何か最近パイオニアさんイベントに来る(社員の)人数多いねって(笑)」
R:あー確かに!パイオニアさん一つのブースにたくさんいらっしゃいましたね!
H:あれは実は、私が言ってることが本当かどうか確かめに来てたんです(笑)
R:なるほどー!(笑)
H:で、見に来たら確かに皆さん持ってる機材も何段も積んでたり、話してる会話もそんな感じだし…。
R:あーじゃあ、あの頃たくさんいらしてたのはXPA-700開発の布石でもあったんですね。
H:U-05もやってる時期でしたしね。ああいう尖った製品を見たお客様の反応も参考になりますしね。
R:いやもーとにかくこだわりが詰まりまくった製品だとよく理解できました。
H:多分、パイオニアが急にアニソンだとか、こういうデザインとかでやって、しかも最後発じゃないですか?今更来て何やってるの?って思われるはずなんです。私もそうなんですけど、普通に自分たちがワイワイやってたところに急にポーンって入ってきてデカい顔されても「えっ?」って思うじゃないですか。なので、ちゃんと作ってますよ!っていうのを知っていただきたかったので、私が出て来ました。ほんとは人前に出るの苦手なんですけど(笑) 仲間にしていただけたらなって思います。
R:僕はそのやり方で正解だったと思いますよ。この製品に関しては、すごい一方的に話すだけの発表会で最後に綺麗なお姉さんがアンプを持って撮影会!よりも、野村ケンジさん(オーディオライター)と佐藤プロデューサーと林さんが三人でニコッてアンプを持ってるあの発表会で大正解でしたよ!(笑)
H:あれは、あれ俺ら何で写真撮られてるの?ってなりましたからね(笑)
R:じゃあ、あとは皆さんに聴いていただきたいところですね!
H:はい、ぜひ見た目で判断せずに、オーディオ機器として判断していただきたいと思います。
R:そうですね、林さん今日はありがとうございました!
H:ありがとうございました。
いかがでしたか?
林さんとパイオニア開発陣の魂のこもった最新アイテム、XPA-700の魅力を感じでいただけたでしょうか。
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