どうも、こんにちは!
eイヤホン 大阪日本橋本店の、ののです!
【モニターヘッドホンってどんなのを選んだらいいの?!】
という本連載ですが、
初回となる前回では「そもそもモニター用って何?」
という根本的なところからお話をさせていただきました。
そして”モニター用製品”には「演奏用」と「制作用」がある、
という話をさせていただきました。
連載・第2回目となる今回は「演奏用」、
とりわけ店頭でもよく問い合わせをいただく、
ステージ上で使うモニターイヤホンについて、
オススメ商品も交えて説明させていただきます!
ステージ用モニター選びで押さえておきたいポイント
まず最初に、前回のおさらいですが、
ステージ上で何をモニターするのかを押さえておきましょう。
①返し…自分たちが歌ったり演奏して発している音
②クリック…リズムを合わせるため、一定間隔で鳴るガイド音
③バッキングトラック…予め設定しておいた伴奏データ
※②や③などの機械的に設定された音源を「同期音源」といい、
「同期音源」に合わせて演奏することを「同期演奏」といいます。
基本的にはこれらを聞きながら演奏することになります。
このため、クリックの聴き取りを筆頭にリズムを取りやすく、
なおかつ自分の演奏している音のピッチなども把握しやすい、
そういったモニターイヤホンが必要になりますね!
さらに、ステージ上で使用という特殊な状況により、
製品を選ぶ際は以下の要素にも気を付けなければなりません。
①遮音性が高い
遮音性が高いイヤホンを使用することのメリットは、以下の通りです。
①外界由来のノイズに影響されにくいため、正確にモニターできる。
②高い遮音性を確保し、モニタリング音量を下げることで、
アーティスト自身の聴覚の保護という効果を得られる。
観客に魅力的なサウンドとパフォーマンスを届けるために、
(適度に指向性があるとはいえ)スピーカーから大音量を放ちますので、
ステージ上も当然ながら爆音にまみれることになります。
この状況で、上記の返しなどに関して正確なモニターを行うために、
高い遮音性が必要となることは想像に難くありません。
モニタースピーカー(ころがし)よりも、
イヤーモニターのほうが基本的に有利となります。
このため、SHURE製品を代表として、
多くのモニターイヤホンは遮音性が高くなるよう作られています。
耳型に合わせて作るカスタムインイヤーモニター(カスタムIEM)が
ステージミュージシャンによく使われるのも、
耳の形にピッタリとはまるカスタムIEMの遮音性が非常に高いためです。
②大音量でも高解像度、かつ刺さりにくい音質
2番目については、イヤホンの音質の部分ですね。
まず、比較的大きめの信号を受け止めても音が歪みにくい、
といった特性が求められます。
次に気を付けなければならないのが、刺さりにくいことです。
モニター音の調整はPAエンジニアが行うことが多いのですが、
人間である以上、その調整の仕方も個々それぞれ差があります。
ここで問題となるのが、エンジニアが不慣れだったりすると、
想定外なサウンド、とりわけ刺さるような音が出てしまうケースがあります。
(エンジニアがアーティストと同じイヤモニを使用して調整できればよいのですが、
現実な話、アマチュアだとそれが厳しいことが多いようです。)
このため、イヤホンのサウンドとして刺さりにくいタイプのものが好まれますね。
調整がうまくいかず、パフォーマンスに影響が出る不快な音とならぬよう、
かなりの割合のモニターイヤホンが
ミッドハイ以上の帯域が出過ぎないようチューニングされる傾向のようです。
これが「ステージミュージシャン向けモニターイヤホンは
ウォームな音質のものが多い」といわれる所以でしょう。
③場合により、あえて外の音が聞こえるタイプの製品を選ぶ
「高い遮音性が必要とか言っておきながら一体どういうことや?」
と思われるかもしれませんが、これも留意しておきたいポイントです。
”遮音性が高くないイヤモニはモニターとしてダメ”
と言われることがありますが、本当に必ずそうなのでしょうか。
先ほど高い遮音性であることのメリットを説明しましたが、
逆に、高い遮音性を確保できるイヤモニを使用した場合の
デメリットの部分とは何でしょう。
それはひとえに、
・音の面で外界と遮断される。
という部分に尽きます。
これにより、実は以下のような弊害が生じる可能性があるのです。
~
・アマチュアの環境のためにセッティングが不足している場合、
クリック音しか流れない、という状況がありえる。
自分や周りの演奏が聞こえないという根本的な問題が生じる。
・高い遮音性を確保することで外耳道閉鎖効果※が発生する。
とても大きな声量で歌うボーカリストなどは、
自分自身の声の反響でモニター音を聴き取りにくい場合がある。
(※外耳道閉鎖効果…外耳道をイヤホン等で閉鎖した際に生じる現象。
通常、声帯などが発する振動は頭蓋骨を通して外耳道へ伝わり、
耳の外へ放射されるが、この最後の拡散が行われなくなるため
自分自身の声が耳の中で滞留し、強く反響するようになる。)
・自らの演奏を「返し」でしか聞くことができなくなるため、
ダイナミクス(音量の大小)の把握はあくまでもマイクを通したものである。
たとえばボーカル帯域の量感が過度に多いものを使用した場合に、
「自分はわりと大きな声を出している」と錯覚してしまい
実際には抑揚の豊かな発声ができていないという状況が起きてくる。
また、演奏時にアーティスト自身がライブの熱量などを感じにくい側面もある。
~
こういった理由があり、それぞれの事情によっては
「遮音性の高いイヤホン」が必ずしもモニターとして正義となるとも限らない、
というのが難しいところですね。
こういった点の解決に注力したモニターイヤホンも存在しますので、
その製品に関しても後ほどご紹介いたします。
片方の耳では外部の音を直接把握できるように
イヤモニを片側だけで使用するケースもあるようですが、
左右間の聴力バランスに悪影響を及ぼしかねないので、
そうした使い方はイヤホンの販売員として推奨はしかねます。
あくまでも自己責任で、といったところですね。
オススメのモニターイヤホン
では実際に、上記の観点を考慮しつつ、
オススメの製品をご紹介させていただきます!
ステージ上のモニターといっても、いろんなパターンがありますから、
店頭でもよく問い合わせを受ける「ドラマー」と「ボーカリスト」、
この2種類の例を前提に考えてみましょう。
予算の立て方も非常に大事ですね。
イヤモニだけを買えばいいというだけならまだしも、
ボーカリストなどの場合だと
イヤモニを接続するモニターシステムも買わなければならない、
という場合もあるでしょう。
SHUREの「PSM300 インイヤーモニターシステム」など、
よく普及している免許不要B帯のパーソナルモニターシステムでも
2019年6月現在の市場価格を見てみると
送信機&受信機のセット価格は7万円を超えることが多いようです。
つまり4万円のイヤモニを選ぶだけで合計予算は10万円に達する、
なんてことが起きてしまうわけです。ですので予算の立て方は大事です。
店頭で初心者の方の接客をしていると、
自分はモニターシステムも買う必要があるのかが曖昧なまま、
先にイヤモニだけの購入を検討されている事例を時折見かけます。
この点は一度ご確認いただければと思います。
そのうえで、予算を決めてお好きな製品をお選びください!
ケース①:同期音源を聞きながら演奏するドラマーの場合
SE215 クリア Pro Line(SHURE)
マイクからレシーバー、モニターイヤホンまで手厚くサポート。
安定のSHUREですね。これは間違いないメーカーです。
「SE215」はSHUREのモニターイヤホンの中で比較的安価ですが、
モニター用、リスニング用問わずロングセラー品。
この「SE215 Pro Line」というパッケージが優れているのは
162cmのケーブルが付属していること!
「ケーブルが短くて届かない!!」なーんて事態にはなりにくいのです。
さらに理論上最大37dBの遮音性を持ち、様々な方の耳の形にも合うため
遮音性の高さというモニターイヤホン選びで重要な点を容易にクリア。
スペック面で筆頭候補となるモニターイヤホンでしょう。
音質も無理に強調したところがなく、入力に対して素直な特性を持つため、
店頭でご試聴し、そして音にも納得してご購入いただくことが多い製品です。
ケーブルが着脱可能(MMCXコネクタ)なので、
断線時もケーブルを購入頂ければ本体ごと交換する必要がありません。
予算に余裕があれば、SEシリーズの中でも特にリニアな特性を持つ
リファレンスクオリティの「SE425」もオススメですね!
各パートのバランスの良さはSEシリーズでもピカイチです。
こちらもケーブルが長いPro Lineパッケージがありますよ!
MP-120(MACKIE)
ドラムの音を返しでモニタリングすることにより焦点を置くならば、
MACKIEの「MPシリーズ」もオススメです。
アタックの部分が強すぎない一方でモコモコともせず、
しかも低域の明瞭度がすこぶる高い音です。
爆音のラウドネスの中でもモニターしやすいでしょう。
低音の中で低音を見失わない状態を「フラット」だと定義したい方には、
まさにもってこいな製品だと思います。
しかも付属品が物凄く充実しており、
各々の耳に正確にフィットさせるために重要なイヤーチップ
(イヤホンの先端についているゴムのようなパーツ)が
・通常のシリコン素材
・低反発素材
・二段傘タイプのダブルフランジ型
の3種類、3サイズずつ同梱されています。
これに加えて、MACKIEならではの戦車級に頑丈なケース、
標準変換アダプターなど、必要なものは全て入っています。
SHUREに並んでまず困らない選択肢の一つでしょう。
予算に余裕があれば、余裕のある低域のレスポンスに加えて、
高音域側の明瞭さにもこだわった「MP-240」もオススメ!
ケース②:ピッチを正確に捉えたいボーカリストの場合
B200 フロスティ(BRAINWAVZ)
ボーカリスト用のモニターイヤホンは、少しウォームな傾向で
派手な味付けが無い音のものが向いています。
この「B200 フロスティ」は
イヤホンの中のスピーカーにあたるドライバーを2つ使用し、
クロスオーバーを設けていますが、位相は正確で曖昧さがありません。
2ドライバーの恩恵で音像が濃い一方、上下のレンジを薄く削っており、
ボーカルがどれぐらいのピッチで歌っているのか
非常にわかりやすい製品だと思います。
実際、店頭で接客するとボーカリストさんには圧倒的にウケが良いですね。
ケーブルが着脱可能なのはもちろん、
ケーブルが2本同梱されているのも、この価格帯では非常に珍しいです。
SHUREと比べますと遮音性の優位性はさすがに勝らないので、
イヤーピースをしっかり選んでいただくことが大事ですね。
CW-U02(カナルワークス)
日本のメーカーのモニターイヤホンです。
耳型に合わせて作る「カスタムインイヤモニター(IEM)」
という製品ジャンルをご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、
そのカスタムIEMを製造することで有名なメーカー。
たくさんの人の耳型と向き合ってきた経験とノウハウで、
どんな方にもピッタリと合いやすい優秀な形状のイヤホンです。
付属するイヤーチップも人の体温で温めると柔らかくなるという
特殊な性質の素材を使用しており、ここもポイント。
音質もクリアな上にボーカル帯域の成分を聞き取りやすいので、
こちらもボーカリスト用としてオススメできますね。
SE215と比較して冷静な音のレスポンスだと感じ取れるはずです。
また、より遮音性が必要となる場合は、
いっそカスタムIEMをご検討いただくのもいかがでしょう。
個々の耳型に合わせてオーダーメイドで作る工芸品的な部分もあり、
カスタムIEMは価格が高くなりがちですが、手も届きやすい部類です。
IER-M7(SONY)
天下のSONYから発売されたステージ用のイヤモニ。
SONY製品というと、ワイドレンジでキレのある音な一方、
ちょっと金属的な響きに苦手意識をお持ちの方もいるかもしれませんが、
このIERシリーズイヤーモニターは違います。
SONYにしては珍しくウォーム傾向で、
ボーカルや楽器などそれぞれのパートが、
効率よく鳴らし分けられるように考えられたサウンドになっていますね。
1個の塊でまとまって原音に忠実を目指すのではなく、
セパレートが良い方向性に振り切っているため、
複数の音を聴き分けたい場合などには特に真価を発揮する製品です。
しかも面白いのが、それほどまでにステージモニターらしい製品なのに、
音色は冷たすぎることなく、グルーヴ感をしっかり感じられる点。
リスニング用でも人気があるのはこういった部分もあるのでしょう。
ちなみに大変高額ではありますが、
さらに全体の音の明瞭さをグレードアップさせた「IER-M9」もあります。
ボーカリストにはむしろ「IER-M7」のほうが聞きやすく人気ですが、
予算と音の好み次第でこちらをご選択いただくのもいいでしょう。
UM Pro30【Redesign Model】(Westone)
アメリカのカスタムIEMメーカー「Westone」のイヤモニも、
大音量でも刺さりにくい傾向の音質で人気です。
大音量のライブ会場で耳栓をつけて聴いている感覚に少し近いです。
中でもこの「UM Pro30」はボーカルとギターの鳴らし分けが秀逸で、
しかもドラムのアタックの帯域も明瞭なため、万能。
バンドマンに普段使い用のイヤホンとしても非常に人気な機種です。
なお、ありがちなパターンとして
予算的に妥協して「UM Pro10」、という方もいらっしゃるのですが、
UM Pro10は人によってはギターの主張が少し強いと思われるかも。
ボーカル用のモニターで使うかは、ご試聴の上での検討をオススメします。
もちろん試聴の上で納得できれば、それがご自身に合っていますよ!
AM Pro10(Westone)
さて、同じWestoneのイヤモニですが、
こちらが”外の音が聴こえる”タイプのイヤモニです。
先に説明したイヤモニ選びの要素での③にあたる製品ですね。
普通、イヤホンにただの穴(アンビエント)を設けると、
外部の音が単純に入り込んできてしまうため、
イヤモニから流れる音の精度は落ちてしまいます。
ところがこのWestone「AM Pro」シリーズは、
そうした音質の劣化を防ぐ特殊なフィルターを内蔵しています。
バンドの演奏音やファンの歓声など最低限欲しい音だけを通過させ、
それ以外の余計な周波数帯域の成分はカットする、という仕組み。
このシリーズで一番下の型番の「AM Pro10」の時点で
少しお高めなお値段ですが、凄い技術なので納得ができます。
音質傾向についてもボーカル帯域が聴きやすいようにできており、
純粋にボーカリスト用のモニターイヤホンとして優秀ですね。
「ライブハウスの設備の関係でモニターからクリックしか流れない」
「マイクを通してではなく、ライブの実際のグルーヴ感を大事にしたい!」
といった方々は、このWestoneのAM Proシリーズがおすすめですよ!
イヤモニなのに外の音が最低限聞こえる、という面では、
駅のホームでアナウンスを聞き逃さないなど、
普段使いとしても役立つ場面がありそうですね!
ボーカリストのモニターとしてはAM Pro10の時点で優秀ながら、
全帯域がさらに高解像でバランスがよい上位機種に
「AM Pro30」というものもあります。
予算に余裕があれば是非こちらもご検討ください。
さらに、この「AM Pro」シリーズの技術を
耳型に合わせてオーダーメイドで作るカスタムIEMに応用したのが
「EAS」シリーズというラインナップです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ステージ用のイヤモニの選び方においては、
以下の点に気をつけましょうということをご説明しました。
①基本的には遮音性が高い製品を選ぶ。
②大音量でも歪まず、刺さりにくいタイプがおすすめ。
③必要に応じて外の音が聞こえるタイプの製品も選択肢になる。
そして自分がモニターしやすい帯域が聴き取りやすいかですね。
また、予算の立て方に関しては
イヤーモニターを買うだけでよいのか、
モニターシステムも買わなければならないか、といった違いで
大きく変わってきますよ!ということもお話ししました。
一番お伝えしたいのは、上記の「選び方」の部分。
製品としてオススメしたものは、条件から導き出し、
かつ店頭でも好評をいただいているものであり、
絶対にこのイヤホンの方がいい!というわけではありません。
そちらは参考程度に考えていただければいいかなと思います。
それでは次回の連載・第3回、
「楽曲制作用ヘッドホンの選び方」もお楽しみに!
eイヤホン 大阪日本橋本店の、ののがお送りしました!
e☆イヤホンの”のの”です!元配送事務、大阪日本橋本店スタッフ。
ゲーム大好き、ゲーム音楽大好き。
アコースティック系のインストをよく聴きます。
愛機はPLENUE 2/KL-Lakh、UE Pro Reference Remasterd。