大先生です。

 

今回はなんと、ロックバンド『downy』『unkie』のギタリストとして知られるアーティスト・青木裕さんにご来店頂きました。

 

青木 裕

プロフィール

音楽家。downy、unkieのギタリスト。

イラストレーターとしても活動しており、2016年には初の個展となる「青木裕展」を開催。

2017年1月、ギターのみで構築したソロ・アルバム『Lost in Forest』をリリースした。

 

今回青木さんがご来店されたのは秋葉原のカスタムIEM専門店

e☆イヤホンの各店舗の中でも、耳の型を採って製作されるオーダーメイドのイヤホンが注文出来るお店です。

 

秋葉原・カスタムIEM専門店。

世界中のカスタムIEMのサンプルがズラリ

 

カスタムIEM専門店は世界中のカスタムIEMメーカーのサンプルが展示されており、そのいずれもが試聴&オーダー可能となっております。

 

多数のサンプルをご覧になっている青木さん

 

そんな中から今回、青木さんがオーダーした機種は……。

 

こちら!

 

 

 

Unique Melody

MASON II

 

こ、これはー!!

 

MASON IIといえば、このUnique Melodyというメーカーの中でも最高級の機種。

値段もさることながら、比較的ディープなユーザーに愛されるマニアックな製品です。

 

一体なぜ、こんな玄人好みな選択を……?

そう思って聞いてみると、実は青木さん……。

 

 

ユニバーサル版をお持ちでした。

 

ユニバーサル版というのは、耳型を取らずに共通の形で製造されているモデル。いわゆる普通のイヤホンと同じように作られているものです。

 

メリットとしてはオーダーの期間を待たずとも購入してすぐに使用出来る点や、リフィット(耳の収まりが悪く、再製作してもらうこと)の心配が無い点、周りの人に聴いてもらうことが出来る点などがあります。

 

特にこのUnique Melodyという会社のユニバーサル機は特に評判が高く、共通の形ながらカスタムIEMに迫るフィット感を持つことなどでも知られています。

今回の記事の後半でも、青木さんによるユニバーサル版MASON IIのレビューがございますので、ぜひ最後までご覧下さいね!

 

 

 

しかしそれはそれとして、やはり自分のために世界でひとつだけのイヤホンを作るというのは、また別の話。

気に入ったモデルであれば、オーダーメイドで製作したいというのは当然の心理といってもよいでしょう。

 

そんなわけで今回はUnique Melodyの国内代理店であるミックスウェーブ宮永さんご協力の元、青木さんにカスタム版MASON IIをオーダーして頂きました!

 

 

 


 

カスタムIEMをオーダーするためには、まずはインプレッション(耳型)を製作する必要があります。

カスタムIEM専門店の地下一階にはリスニングラボという補聴器専門店があり、そちらでインプレッションを採取することが可能です。

 

 

耳型が出来たら、カスタムIEM専門店がある1Fの方に戻り、オーダーをして頂きます。

カスタムIEMはひとつひとつ製作しているので、デザインを自由に選択することが可能

Unique Melodyも、カラーやアートワークなど、多彩なオプションから自分好みのデザインを選択することが出来ます。

 

Unique Melodyのオプション一覧

今回は宮永さんのカスタムIEMなども交えて、色々なデザインを検討して頂きました。

 

 

デザインが決まったら、e☆イヤホンを通じてオーダーと耳型がメーカーへ送られます。

メーカーにもよりますが、海外だと大体納期は2〜3ヶ月前後のところが多いです。

果たして青木さんはどのようなデザインを選ばれたのか? 完成が楽しみですね!

 

 

 


 

それではオーダーも済んだところで、ユニバーサル版MASON IIをお持ちの青木さんに宮永さんとの対談形式でレビューをして頂きました。

 

各業界で高い評価を持つ2人の夢の共演

 

○宮永さん

今回はインタビューをご快諾頂き、ありがとうございます!

青木さんは個人的にMASON IIのユニバーサルモデルを使用されているとのことですが、この機種を選んだきっかけはなんでしたか?

 

 

○青木さん

UM製品の高い評判は知っていましたが、MASON IIの出会いは偶然に近いものでした。

実は、もともと気になっていたイヤホンは別にありまして、そのイヤホンとMASON IIの試聴機がe☆イヤホン店内に並んでいたんです。何気なく試聴してMASON IIの虜になりました。

 

 

○宮永さん

高い評判?! いやー、有難いですね(宮永が会釈)。

もう少しその高い評判について聞かせて頂けますか?

 

 

○青木さん

当時のネット上の評価を参考に判断したものですけどね。

イヤホンの世界に魅せられ、更なる知識を得ようと検索する日々でした。UM製品は常に話題になっていましたね。

ポータブルオーディオに興味を持つ者が周囲にいなかったので、評論家のレビューや一般ユーザーの意見は貴重な情報源でした。

 

e☆イヤホンに寄せられた、UM製品のレビューの一部

 

 

○宮永さん

なるほど。

話を戻しますが、青木さんはMASON II以外の機種。MAVERICK IIやMAVIS IIなども試されたことはありますか?

 

 

○青木さん

比較はしてないのですが、数年前に初期MAVERICKを試聴したことがあります。当時イヤホンにハマりつつあった僕にとって、MAVERICKのキレの良い派手な音は衝撃的でした。UM製品のクオリティーを思い知らされると同時に、僕のイヤホン熱を加速させた体験です。

 

初代MAVERICK(2014年発売)。後継機種が発売された今も、根強い人気を誇る傑作

 

 

○宮永さん

MAVERICK! 作るのにクソ苦労しましたよ!!

他にも印象に残っている機種はありましたか? 他社さんのイヤホンも含めて。

 

 

○青木さん

Noble Audio K10は僕のイヤホン基準値となるものです。Shure SE846はイヤホン沼にハマるきっかけとなった機種であり、JH Audio 初代Laylaの発売日には自ら沼に飛び込みました(笑)。

一時はケーブルを含めてイヤホンを片っ端からチェックしてましたね。取り憑かれていたんです(笑)。振り返るとその全てが印象に残っています。各メーカーの特徴も独特で、しかも音質は年々向上していくようで刺激的でした。

最近ではAROMA Witch Girl12。先に話した”気になっていたイヤホン”はこれです。で、Witch Girl12購入直後にMASON IIを試聴してしまったんです(笑)。それぞれに良さがあってどちらも愛用しています。

 

 

○宮永さん

なるほどです。

そんな沢山のイヤホンを聴いてきた青木さんが、MASON IIを選択した最大の理由が知りたいですね。

 

 

○青木さん

やはり、音質の素晴らしさです。スピード感に溢れ、高解像度でありながら非常にナチュラルな印象を受けました。奥行きのある空間が繊細な表現力をより際立たせていますね。MASON IIの持つ艶と開放感は僕がイヤホンに求めるものでした。

 

 

以前は、物理的な観点から見ても、音場が狭く耳元で鳴る音はイヤホンの宿命と思い込んでいたんです。それ故にスピーカーを併用する意味があるとも考えていました。MASON IIは完成された一つのリスニングルームとも言えます。

 

 

○宮永さん

MASON IIの持つその開放感のある空間表現は、実は自分が昨年の3月にTOTOの武道館ライブに行きまして、そこで得たインスピレーションがヒントになってます。ステージと観客席を埋める臨場感。これを本気で再現しようと思って、MASON IIの開発に着手しました。

しかしMASON IIの魅力はその開放感のある空間表現だけでなく、MASON IIとしての『個性』という面でもかなりこだわってます。個性は私が大好きなサントリーのウィスキー、『響』がヒントになったんですが……おっと、これ以上は話が長くなるのでやめておきましょう(笑)。

 

逆に、音以外で気に入っている点とかありますか?

 

 

○青木さん

『響』とくれば『山崎』も捨てがたいですね。

それはさておき(笑)、12ドライバーを搭載した筐体がごつくてかっこいいです。紫色のシェルには白いイヤーピースがよく似合いますね。やはり見た目は大切でしょう。精密機器が詰まったイヤホンはロマンを思い起こさせます。

個人的な見解ですが、少年時代に熱中したガンプラへの思いを彷彿させます(笑)。

 

青木さんのMASON II

 

 

○宮永さん

私もその筐体カラーとフォームチップの組み合わせ好きですよ。

ちなみに、普段はどのような環境でMASON IIを使用してますか? どんな音楽を聴くのに使っているのか、など。

 

 

○青木さん

自宅では作業の流れからRME Babyface Pro(USBオーディオインターフェイス)に接続することが多いかな。外出時はAKのDAPやiPhone。

音楽制作時はリファレンスとしてあらゆる音源を聴きます。エレクトロニカ、クラシック、ロック等ジャンルは問いません。僕が音に全神経を注ぐときですね。

それ以外で音楽を聴くときは頭がからっぽの状態です(笑)。普段はクラシックやサントラを聴くことが多いですね。

 

 

 

○宮永さん

MASON IIに合うジャンルなど、何かありましたか?

 

 

○青木さん

MASON IIは空間表現に優れ、多くの情報量を鮮やかに描き分けるのでサントラはオススメです。繊細な曲から壮大な交響曲、そしてロック調の曲まで幅広く並ぶのがサントラの良いところ。結局はなんでもありというところでしょうか。

 

 

○宮永さん

なるほどです。

青木さんのような楽曲を創り出す方から評価して、MASON IIのクオリティはどうでしょう? 非常に気になります。

 

 

○青木さん

MASON IIでバンド音源を聴くと、レコーディング・スタジオの広さ、マイクの位置までもが目に浮かびます。ドラムのキックから風圧を感じられることもポイントです。

イヤホンらしからぬスケール感に過剰さはなく、あくまでも自然で、広いステージに音が立体的に配置されるイメージです。

音場の広さを謳うイヤホンで前後の描写力が伴わない機種が稀にありますが、MASON IIはバッチリ。明瞭な音像定位はミックスダウンの精度を向上させます。

 

 

○宮永さん

非常に嬉しい回答ですね! 開発者冥利に尽きます!

するともしかして、楽曲制作の現場においてMASON IIが使用される事も?

 

 

○青木さん

もちろん。気持ちよく作業ができることは理想的です。

MASON IIの出会いが僕のソロ・アルバム完成後だったことが悔やまれます。最新ミュージック・ビデオ『Open the Gate』に使用された音源の追加録音とミックスダウン、マスタリングではMASON IIを使用していますよ。

 

 

 

○宮永さん

青木さんの事を知り、早速最新のソロ アルバム『Lost in Forest』を聴かせて頂きました。

私のファーストインプレッションは、複雑なギターの音色が重なりあったそれぞれの楽曲が音楽というよりも『芸術』に近いという印象で、これまで私が聴いてきたロックやポップス、ジャズなど、そもそもどこかのジャンルに属するという単純な捉え方自体が大きく間違っていると直感的に脳が認識し、絵画でいうとピカソの作品に初めて出会った時のような芸術的、アーティスティックな要素が非常に強い作品だと感じました。

 

一音一音が不規則であるかのようで、実はその一音一音に規則性があり、結果として1つの作品を成しているという幾何学的な要素を感じるこの作品に真摯に向き合うとすれば、例えばイヤホンならMASON IIを含めた高解像度で広いダイナミックレンジを持つイヤホンでじっくり聴き込むことが、青木さんのこの作品としっかり向き合う上で、最高の特等席となると感じました。

青木さんとしてはどのように思われますか?

 

 

○青木さん

このアルバムはそもそも発売を意識して制作したものではなかったんです。

ある日、頭の中で曲のアイデアが次々と溢れ出しまして。断片的なフレーズや構成といった、どちらかといえば感覚的なものだったのですが、それらを記録しておかないときっと後悔すると感じたんです。10年ほど前のことですね。当時は録音の知識が乏しくて本当に苦労しました。結果、長い制作期間となりましたが、僕の成長には必要な時間だったんです。『Lost in Forest』は作品というよりは、自分の姿を見るような気持ちです。

 

MASON IIが鳴らす、イメージ通りの音像には驚きます。そればかりか、僕だけが知る隠れた音、正確には隠した音が聴こえるんです。効果を狙ったわずかな音量のフレーズ全てが、生々しく耳へ届きます。宮永さんのおっしゃる”最高の特等席”という表現は興味深いですね。そして、その通りだと思います。

 

 

○宮永さん

こちらは各種ハイレゾ配信サイトでも発売されていますが、制作の段階で既にハイレゾ音源としてのリリースを意識されていたのでしょうか?

 

 

○青木さん

そこは意識しませんでしたが、僕が制作中に聴く音と同様、圧縮することのないクオリティーを皆さんに届けたいという気持ちは常にありました。

 

 

○宮永さん

アーティストとして、そして何よりリスニングに深い理解を持つ青木さんとしてもずっと考えていたことが実現したわけですね!

そんな『Lost in Forest』の中でも、『これは特にMason IIに合う』という楽曲があれば教えてください。

 

 

○青木さん

『Open the Gate』かな。

ギターで作った様々な実験ノイズをMason IIが忠実に描き出してくれます。参加していただいたMORRIEさんのボーカル処理もよくわかりますね。制作期間が長かった分、誰よりも聴いたであろう曲です。僕がこの曲でイヤホンを試聴すれば、初めての機種でも特性をほぼ見抜きます(笑)。

 

 

○宮永さん

『Open the Gate』! 帰り道にじっくり聴きこんでみます! もちろん、このMASON IIで!!

それでは最後に、業界の底辺を這っている私が言うのもあれですが……。貴重な青木さんの意見として、今後のポータブルオーディオ業界に思うこと、そしてこの記事をご覧の方々へメッセージをお願いします!

 

 

○青木さん

うーん、イヤホン・ヘッドホンの装着を忘れさせる頭外定位を実現してほしい、なんてことはよく考えますね。

高性能化が進むポータブルオーディオ界についていくだけで精一杯、というのが本音だったりします(笑)。

ありがたい状況ですが、一般の人々の中には、”オーディオはハードルの高い世界”と敬遠する声があるのも事実。そういった人たちに、良い音で楽しむことの素晴らしさを知ってほしいですね。もし、僕の作品や発言がそのきっかけになったら光栄です。

 

今は空前のイヤホン・ブームです。たくさんの人が良い音を求め、各メーカーがアイデアと技術でそれに応えた結果でしょう。この恵まれた時代に感謝し、感性を磨き、耳を鍛えながら、僕も皆さんと一緒にイヤホン界の発展に貢献できればと思います。downyの一員として、そして青木裕として皆さんの心に響く作品を生み続けたいです。

 

 

○宮永さん

イヤホン・ヘッドホンの装着を忘れさせる頭外定位の実現……! やはり、アーティスティックな方はアイディアも凄まじいですね。もちろん良い意味で、です。

私も末端からですが、何かできないかと模索します!本日はご多忙のところありがとうございました!

 

あっ、近々ソロライブやられるそうですね!

大先生、詳細は記事にお願いします!

 

 

 


 

最後にまさかの振りをされたので、青木さんのソロライブの告知をどうぞ!

 

『Aoki Yutaka  Lost in Forest LIVE』

日程 20171118日(

会場 渋谷WWW

開場 18:00  開演 19:00

前売 3900円+1drink

当日 4300円+1drink

詳細は公式サイトも併せてご覧ください。

 

 

 

また、対談中にも登場した、青木裕さんのソロ・アルバム『Lost in Forest』は各種ハイレゾ配信サイトで好評配信中です。

 

【OTOTOY】

【e-onkyo music】

【mora】

【レコチョク】

(クリックで各配信ページへジャンプします)

 

『OTOTOY』さんのページでは、先行配信時の特別インタビューも掲載されています。

こちらもぜひチェックしてみて下さいね!

 

 

 

お相手は大先生ことクドウでした。それではまた次回。


 

※記事中の商品価格・情報は掲載当時の物です。