大先生です。

 

17/06/17の『e☆イヤゼミナール』イベントレポート。

第三回はS’NEXT株式会社(以下、S’NEXT)による『final』回のご紹介です。

 

 

↓前回の記事はこちら↓

【e☆イヤゼミナール②】ポタフェス前日イベントレポート〜NUARL編〜【#eイヤ名古屋大須店 2017/06/17】

 


今回ご登壇頂いたのは、S’NEXTの営業担当の平井さん。

 

 

 

まず最初にfinalのブランドの紹介をして頂きました。

 

 

finalは、1974年に創業した日本のオーディオメーカー。

元々はレコードプレイヤーのカートリッジを作っている会社でした。

同社の製品の理念として『原理的に正しいことを徹底的に追求する』というものがあります。

その最初に作られたという、カートリッジの針。こちらはダイアモンドを一から削りだしで作るというもので、『音は絶対に良くなる』と各社考えてはいたものの、実際に採算が取れないという問題があり、手を出しているメーカーはありませんでした。

そこをあえてやっていたのがfinal。

創業当時から現在に続く理念となっているわけですね。

 

この記事をご覧になっている皆様も、finalをイヤホン・ヘッドホンのメーカーとして知って頂いている方も多いと思います。

ただ、finalがイヤホン・ヘッドホンの販売を始めたのは2009年ごろ。43年の歴史がある会社として見ると、意外と最近なんです。

 

ちなみに、e☆イヤホンTVが始まったのも2009年くらいで、そのころから初期のfinalイヤホンを紹介していたことを考えると、かなりの長いお付き合い。

 

『e☆イヤTVへの登場回数も最多レベルで、個人的にも思い入れがあるメーカーのひとつ』と話すりょう太。

 

僕も知らない最初期ですね……。そんな頃から、現在のこうしたイベントにまで参加して頂いているのというのは本当に素晴らしいことだと思います。

 

その後2014年に、ポータブルオーディオブランドを『Final audio design』から『final』に変更。

2016年には3Dプリンタで製造されたハイエンドイヤホン『LAB02』が完成します。

 

 

この『LAB02』も物凄まじい苦労があったようですが、そんな努力の甲斐もあり、非常に素晴らしい製品が出来上がっていることは皆様も知っての通り。

原理的に正しい製品を作っていけば、長く使っていって頂ける製品が出来る。

アンティーク家具などにも通ずるような『ずっと愛用して頂けるものづくり』を基調とした製品は、同社のショールームに製品と併せて日本家具を設置していることからもその思想が伺えます。

 

 

 

そして平井さんが『finalの強み』だと語るのは、自社でドライバーユニットを設計・製造していること。

 

 

今回はなんとショールームより、SONOROUSVIII / Xのドライバーユニットをお持ち頂けました。

 

透明なアクリル板の中に入ったドライバーユニットを持つ平井さん

両機種はブースにも展示されていた

 

SONOROUS VIIIはドライバーユニットだけですが、SONOROUS Xはドライバーユニットとフロントプレートが一体型になっています。

 

 

ドライバーユニットとフロントプレートを接着してしまうと、それが音の歪みの原因になりやすくなります。それであれば、一体化されたドライバーユニットを作ってしまおうという考えになったそうです。

金属の金型まで一から作る必要があり、こちらもダイアモンドカートリッジ同様『発想自体はあったものの、採算的に作れない』といったものでしたが、こういった難しい部分を実現してしまうのも先述の『徹底的に追求する』という理念あってこそ。

 

また、finalのスタッフは非常にストイックで、そういった難しいハードルがあってもそれを乗り越えていくのが楽しいと考えられるスタッフが揃っていると言います。

いわばそれ自体がひとつの社風というか、特徴になっているわけですね。

 

そんなわけで、SONOROUS Xはe☆イヤホンの売価でも60万円を超える(2017/06/26現在)超弩級のヘッドホンですが、この価格にしてでも良い音を作りたいという真っ直ぐな想いが伝わってきます。

 

 

 


おおよそどういったブランドかを理解して頂いたところで、お次に開発中の平面振動板のヘッドホンについてご説明して頂けました。

 

平井さん曰く『エンジニアにねだって持ってきた』という平面振動板ヘッドホン。

 

ここまで3年の開発年月をかけたという平面振動板ヘッドホン。

 

平面振動板のヘッドホンを作りたいという考えは元々あり、それは平面振動板にクリアで整った音が作れるという特性があるため。『高音質を追求するfinalとしてどうしても形にしたかった』という想いがあったとのことです。

 

しかし、平面振動板を作るにはやはり難しさが伴います。

そんなハードルのひとつである、『平面振動板の長所と短所』をまとめたボードをお見せして頂きました。

 

 

特筆すべきは『低音が出にくく、開放感がない』という短所。

finalはそこを技術でカバー出来るのではないかと考え、徹底的に追求した平面振動板の開発に着手していくことになります。

 

finalの考え方において『現実で鳴っている音(例えば、会場で平井さんが話している声がお客様の耳に届く、といったようなナチュラルな音)をイヤホン・ヘッドホンで出来る限り再現したい』というところがあり、この平面振動板ヘッドホンにおいてもそういった部分を含めた長い設計開発の末に、ようやく現段階にたどり着いたとのこと。

 

 

ただ、こちらもまだ完成形ではなく、筐体デザインもまだ決定ではないので、筐体もどんどん変わっていくだろうとのこと。

あくまで『いま試作すると、こうなる』という形にすぎず、今後もブラッシュアップされていくようです。

 

 

『これはこれでかっこいいですけどね』とりょう太。

確かに試作機らしい無骨なデザインで、finalの従来機とはまた異なる印象があります。

 

気になる値段に関しても、『finalの幅広い価格帯のラインナップ』の更に上に行くようなことはなく、大体30万円前後くらいになれば……とのことでした。

既存のラインナップの後継機種などではなく、完全に別枠のようです。

 

 

 

また、今まで各社から発売されてきた平面振動板の製品も研究してきたというfinal。

先述の特徴にもあった通り、既存の平面振動板ヘッドホンは低域の再現性に欠ける物が多く、ユーザーの方々からもそういった意見やイメージが多かったと言います。

 

しかし、今回のfinal試作機は各イベントでも評判が良く、特に低域がしっかり出ているとの意見が多かったそうです。

平井さんも『今まで市場に出ていた他社製品と比較しても、違いをちゃんと出せたのではないか』と自信がある様子でした。

 

 

発売時期としても『9月くらいには皆様のお手元に届けられるように』としているそうですが、そこは『徹底的に追求する』final。

なるべく早くにリリースされるよう、お楽しみにお待ち下さいませ。

既に試作機は聴ける状態になっておりますので、7月のポタフェス秋葉原でもご試聴頂けることと思います。

 


そして続いてはEシリーズのお話。

 

左がE2000、右がE3000。

 

非常に低価格なイヤホン故にもちろん技術的な制限はあったものの、そんな制限があるからこそ燃えてしまうのがfinalスタッフ。

いくら原価を抑える必要があれども、ノウハウは原価には乗りません。であれば、今までのノウハウを徹底的に投入し、かつての5,000円以下のイヤホンには無かったものを作る。そんな思いを込めて作られたイヤホンだったそうです。

そのため、平面振動板ヘッドホンの『ナチュラルな聴こえ方を再現する』という開発のノウハウがこちらにも適応されているとのこと。

 

その出来栄えは、完売が相次いでいる今の状況を見て頂ければ評価は一目瞭然。

人気の要因を平井さんは以下のように分析されていました。

 

まず、チューニングが特徴のひとつだという平井さん。

特定の音域を強調するのではなく、滑らかなチューニングにしたことにより、先述の通りナチュラルに聴こえる音作りを実現し、こういった音の作り方をしているイヤホンは5,000円以下のモデルではあまり無かったのではないかと言います。

 

そして本2機種には『大人の道具』として作っているというコンセプトがあります。

『大人』という言葉を聞くと、自分+10〜20歳くらいの人をパッとイメージするのではないかと思いますが、例えば中学生くらいだと、同じ学校の2個上の人でもすごく大人なイメージがあると思います。

そんなそれぞれの『大人』のイメージに合うような、ちょっと背伸びした良いイヤホンを買いたい、という人たちに向けて作られたイヤホンなのです。

 

 

デザインも、40代や50代の方が、飲み会の席などでパッとテーブルに置いても問題がないようなものになっています。

これは『使用する年齢層を見た目で区切りたくない』という思いからデザインされたもので、高音質なイヤホンに触れてこなかった方々に触れて頂くようなエントリーモデルとしてシンプルな形に纏まっています。

 

自分が使うのにももちろん、プレゼントとしても幅広い相手に贈りやすいイヤホン。人気を集めるのも頷ける完成度ですね。

 


 

また、Eシリーズの人気を象徴する現象のひとつとして『予約』があります。

というのも、今まで発売前のイヤホンで予約が集まるのはその殆どが高級機。5,000円以下の価格帯の低いイヤホンは『店頭で聴いて買えばいいかな』とお考えになる方が大半だったと思います。

しかしEシリーズは、e☆イヤホンで店頭先行展示を行ってからと言うもの、なんと予約が殺到。

 

この売れ行きはEシリーズ自体の出来の良さももちろんのこと、今までfinalが積み上げてきたブランドイメージも手伝っているのではないかと思います。

『final製品がこの価格で買える!』というお得さも相まって、この価格帯としては未曾有といってもよい数の予約が舞い込んできましたのでしょう。

 

もうひとつ平井さんが驚いたのが、『Eシリーズを買いました!』という報告が多かったということ。

そうです。『E2000』か『E3000』じゃなく、『Eシリーズを』なんですね。

低価格、そして後述の明確な音の違いが故に、どちらも購入しちゃった! という人が後を絶たなかった様子。

『そりゃ品切れになるわ!』というりょう太の叫びも無理からぬことです。

 

 

 

そんなEシリーズでりょう太が気に入っている特徴のひとつが『スウィング機構』。

イヤーピースを左右に振ることが出来るため、耳道の傾きにジャストフィットし、よりストレートでクリアな音を実現するという面白い技術です。

 

イヤホン本体側に絶妙な溝があり、イヤーピースがスウィングする。

 

イヤーピース自体にそういう機構が備わっているものはあれど、イヤホン側に工夫がされているものは今までに無いアイディアでした。

これは一体、どんなところから生まれたものだったのでしょうか?

finalは元々装着感にこだわっていたメーカーで、それはイヤーピースひとつ取ってもサイズごとに金型を作り分けるという追求からも伺えます。

そんな装着感の追求からイヤーピースだけでなく、イヤホン本体にも工夫を加え、より幅広い方々に使って頂けるための機構として作られたそうです。

 

すでに評判が良かったEタイプのイヤーピースに加え、その良さを殺すことなく、イヤホンの構造でさらに装着感を向上させていくという見事な完成度には流石と言う他ありません。

 


 

イヤーピースといえば、Eシリーズの特徴のひとつが豊富な付属品

ポーチに加え、Eタイプのイヤーピースが5サイズ(!)、そしてイヤーフック。

皆様はfinalのイヤーピースとイヤーフックのお値段をご存知でしょうか。

 

それぞれ840円と980円。

単体で見るとそう高くもないように見えますが、これらが5,000円以下のイヤホンに付属していると考えると、いかにお得かが分かって頂けるのではないかと思います。

 

 

そして、E2000、E3000の音の傾向の違いについても触れて頂きました。

まず、会場内の方々に『E2000とE3000、どっちが好みか?』を聴いてみることに。

 

 

E2000のほうが少し多いぐらいの結果になりましたが、極端に偏ることなく、結構好みが分かれていました。

 

お客様だけでなく、finalの営業部内などでもしっかりと好みが分かれているそうです。どちらが質が上かというより、純粋に音色傾向の違いが現れているわけですね。

 

 

 

Eシリーズに合う楽曲』についてもお話し頂けました。

 

E2000は、中高域がストレートに取れる、ライブハウスで目の前で演奏しているようなイメージのチューニングになっています。

いわゆるJ-POPであったり、ロックのようなジャンルが合うとのこと。

 

LUNA SEAなどのロックサウンドや、LiSAさんなどのポップスをよく聴くという平井さん。ギターの音がストレートに届くので、より楽しめる鳴り方がするようです。

りょう太も同意したようで、『(LiSAさんの)Rising HopeはE2000ですね』と絶賛。また、速水奏さんの『Hotel Moonside』などのEDM系の楽曲も相性が良いと話していました。

 

逆にE3000はコンサートホールのような感じで、ステージと少し距離が空いた席に座って、音が届くまでの空気感を楽しむようなチューニングになっています。

こちらは生演奏のジャズやオーケストラといったジャンルが合うようです。

 

E3000では、坂本真綾さんの『雨が降る』という楽曲が合うという平井さん。とても広がりが感じられる曲で、イントロのアコースティックギターの音が印象的。

佐久間まゆさんと小早川紗枝さんによるデュエットソング『あいくるしい』もスローテンポな楽曲で、E3000の柔らかな響き方にマッチしているとのこと。

 

りょう太がE3000で聴くお気に入りは、プラチナ・ジャズ・アニメ・スタンダードによる『はじめてのチュウ』のジャズ・アレンジ。

アレンジ自体が超絶格好良く、録音も秀逸。E3000の高い再生能力の恩恵を感じられるようです。

 


メーカーさんならではのお話が、final製品のパッケージ写真について

ナチュラルな音作りを目指す製品同様、自然光を照明として撮影するというコダワリがあるそうです。

 

 

こちらはスタンドPOPにも採用されているE3000のパッケージ写真。社内に差し込む自然光でのみ撮影をするため、曇りの日にしか撮影が出来なかったのだとか。

タイミングを見計らって、社内の窓際のスペースをブースにして撮影したとのこと。

今や『世界のfinal』といっても過言ではない一大ブランドとなったfinalだけに、そういった素朴なお話はちょっと面白いですよね。

 

 

 


以上、e☆イヤゼミナール第二部『final』回のレポートでした。

final回は立ち見の方が出るほどの大盛況ぶりでした!

 

次回はソニーマーケティング株式会社様による『SONY』の回!

お相手は大先生ことクドウでした。イベントレポート④に続く。


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