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e☆イヤホンのはまちゃんです!2017年も、もう少しですね!

今年のクリスマスの予定は決まっていますか?

僕のクリスマスの予定は、バンドでレコーディングです!最高です!

 

 

 

本日は!

なんと、大ヒットモニターヘッドホンのレジェンド!

MDR-CD900STの生みの親!

投野耕治氏のインタビューを公開させていただきます!

 

”MDR-CD900STを創った男”投野耕治氏

ヘッドホン技術担当部長 投野耕治 氏

ソニー ヘッドホン技術担当部長 投野耕治 氏

 

 

MDR-CD900STとは?

ソニーと、ソニー・ミュージックスタジオが共同開発した完全プロフェッショナル仕様のモニターヘッドホンです。

 

元々は、CBS・ソニー信濃町スタジオ(現:ソニー・ミュージックスタジオ)で使用することを目的として開発されたMDR-CD900STが、スタジオユースの業務用として販売するに至り、数多くのレコーディングスタジオで愛用されています。

 

またスタジオ関係者のみならずアーティストからも絶大な信頼を得て、TV・ラジオ・雑誌等でも数多く取り上げられ、その結果、一般の方からの購入希望が殺到し、その要望に応えるべく1995年より消費者向けに販売も開始、現在に至ります。

 

 

 

 

投野耕治氏インタビュー

 

ソニーヘッドホンの変遷

それでは、まず、1970年代のソニーヘッドホンのお話しから。

 

初代ウォークマンのヘッドホン、MDR-3(1979年発売)以前は、ホームオーディオしかなく、アウトドアオーディオという概念はなかったんですよ。ですから、家で聴く大きなヘッドホンばかりで、その当時というのは、ヘッドホンの中のスピーカーは「小型のスピーカー」がそのまま入って音を鳴らしていたような感じだったんですね。

 

強力な磁石と、非常に薄いフィルムの登場で、磁石とフィルムを組み合わせることで、当時のスピーカーと同じような感度のものが、小さく作ることができるようになりました。

 

その時に初めて作ったのが、MDR-3に搭載されている、この23mmのドライバーです。

 

十分大きな音がしますし、振動板が軽くなったことで、いままで聴こえなかったような軽い音が鳴らせるようになりました。当時の大型のヘッドホンでは鳴らせないような音でした。

 

 

 

MDR-CD900登場

MDR-CD900(1986年発売)は1982年に、ちょうどCDが登場してきた後の開発機種でした。当時はアナログ(レコード)からデジタル(CD)になって、すごく音が良くなったんです。スクラッチノイズもヒスノイズも、ワウフラッターも無いし、カンッ!と立ち上がる音のスピード感、アナログではとても出せない表現力の高さという物が、当時のオーディオの一番のフォーカスだったんですね。

 

そうすると、CDの音が十分に出せるヘッドホンが欲しい、ということで、MDR-CD900、CD用のヘッドホン、『for Digital』と銘打ってつくったんですね。強力な磁力のマグネットと、非常に軽量なフィルムの技術の上に作られたヘッドホンがMDR-CD900なのです。ここから、MDR-CD900のスタジオ用チューンが開発されたりします。

 

 

当時ソニーの中に、ヘッドホンをどんどん発展させたい、ヘッドホンの付加価値を極限まで高めるとしたら?どういう手法があるだろうというテーマがありまして、私が一つ思いついたのが「楽器」なんですね。

 

大体のヘッドホンって、プラスチックなんですよ、例えば、バイオリンやピアノがプラスチックで出来ていたら、やっぱり最上の音はしない。小学校で使ってる1000円ぐらいのリコーダーはプラスチックですが、10万円もする、「木」のリコーダーもあって、この音のレンジ、価格のレンジを裏付けている価値観の違いについて追及してみたいな、と思って、ケヤキの木から削り出したハウジングで制作したのがMDR-R10(1989年発売)です。日本で、ヘッドホンに木を使ったのは初めてだったと思います。

 

当時、バイオセルロースという天然素材が登場しました。同じセルロース素材、紙の振動板は、スピーカーで使うにはバランスも良いんですけど、紙では、ヘッドホンで使うには10ミクロン、20ミクロンという厚さの振動板は作れないんです、パルプの繊維が100ミクロンぐらいなのでのできないんですよね。でも、このバイオセルロースの登場で、紙と同じ性質を持ちながら、20ミクロンの振動板を作ることができました。

 

振動板も、ハウジングも、イヤパッドも天然素材。ケーブルの被覆にもシルクを採用しています。そういった天然の価値を追求したのがMDR-R10なんです。

 

 

 

SACDの登場

1998年ソニーはSACD(スーパーオーディオCD)を開発します。SACDに向けたヘッドホンの開発が始まり、QUALIA 010(2004年発売)、MDR-SA5000(2004年発売)等がそれにあたります。

 

アナログの当時からすると、録音の手法もかなり変わってきたと思います。アナログの時代でしたら、LPレコードに1オクターブ低い音を入れようと思うと、カートリッジの限界もありました、デジタルになると、その低音の限界が無くなりました。そうなると、録音をするエンジニアも、作曲をする人達も、どんどん低音を使いだすようになりました。例えば、ロック系の音楽のベースでは、従来の低音よりも1オクターブ低いサブベースという物が普通に使われるようになりました。だんだんとレンジが広がってきています。

 

2000 年代以降は、更に低い音域のウォブルベースの登場などもあって、1980 年代に見直した音の標準では、今、お客様が求めている音ではないよね、という中で、ソニーミュージックとコラボレーションしまして、音楽制作の現場に出向き、ヘッドホンの音はこうあるべきだ、というセンターを見直すことをしました。そこで商品化したものがMDR-1R(2012年発売)です。

 

2013年に、ソニーは「ハイレゾ」の訴求を始めます。さらなる空間の表現や、空気感の追及のなかで、MDR-Z7(2014年発売)、MDR-Z1R(2016年発売)などを生み出していくことになります。それぞれの時代の、オーディオのトレンドの中で、新しい素材を取り入れながら進化している、という大まかな流れでした。

 

MDR-CD900のドライバーは40mm、R10の時は50mmのドライバー、Z7は70mmですね。

 

 

 

 

ドライバーは大きいほどいい音になるのですか?

そうですね、やはり大きなユニットのほうが音の余裕があるように感じます。物理的特性では説明がつきにくいんですが。例えば、小さな絵画を近くで見るときと、大きな絵画を遠くから見る時、画角サイズが同じだとしても、同じスケール感ではないとおもうんです。それと同じに、小さいドライバーの音を近くで聴くのと、大きなドライバーの音を、鼓膜から少し離した位置で聴くのと、音の印象って違うんです。そういうことなのかなーと思います。

 

 

CD900STの89年の発売時、開発当時からレコーディングスタジオにおいてデファクトスタンダードとしての役割を狙っていたのでしょうか?

民生用のMDR-CD900は1985年発売、1990年生産終了となりました。MDR-CD900は折りたたみ機構があって、カールコードです。海外では少し仕様を変えて「MDR-V6」という型番で販売されています。

 

当時、信濃町のCBS・ソニースタジオで使われていたモニターヘッドホンのサウンドは、かなり丸い音で、声はよく聴こえるんですけど、私は物足りなく感じました。やはり、スタジオでは声のプライオリティが非常に高い、あるいは音色こそが大事なのだと知り、MDR-CD900をもとにスタジオ用のモニターヘッドホンの音作りを始めました。開発にあたって、デジタルのレコーディングも始まったころでもあり、新しい音を求めたいところもありました。

 

MDR-CD900から3年後、CBS・ソニーの信濃町スタジオと六本木スタジオ内だけで使う為だけのMDR-CD900CBS(1988年)というヘッドホンを開発いたしました。オリジナルのMDR-CD900とは違う音になりますが、当時のスタジオのヘッドホンよりは先進的なものになったと思います。

 

スタジオで音作りをしている中で、低域のキレ、が気になるという話になりまして、その話をしている現場で鉛筆でヘッドホンに穴をあけて微調整したりもしてましたね。

 

完成後、次第にCBS・ソニースタジオのヘッドホンの音を聴いたミュージシャンの皆さんの好評が広まり、CBS・ソニーのスタジオだけで使うだけでなく、ほかのスタジオにもこのヘッドホンを売り出すようになりました、その時に、MDR-CD900ST、という名前にしたんですね。

 

モチベーションとしては、スタジオのスタンダードになりたいなー、というのはありましたが、それ以前に、デジタルレコーディングの音作りがフルにできるようなものを作る、というのを考えたいというのはあったと思います。

 

 

 

モニターヘッドホンは主に音のチューン、調整に使われるものですが、実際にはモニタースピーカーがありますから、基本的にはモニタースピーカーで調節されますよね。ヘッドホンで聴いたときの音の評価や、サブシステムとしてミキシングに使って頂いてます。

 

また、CD900STは現在、いろいろなアーティストに音楽制作の現場で使っていただいています。歌手の皆さまの録音にはよく使っていただいてますね。歌手の方は楽曲の伴奏を聴かなければならないし、スピーカーから流すと、マイクには入っちゃいますから。でもヘッドホンの音がぼやけてて、モニターとしてゆるくかえって来ると、声を張り上げたり、上手く歌えないんですね。それぐらい、ヘッドホンモニターの音はクリアーに、ダイレクトに伝わらなくてはならない、と思います。

 

 

 

モニタースピーカーと比較されますが、当時参考にしていたスピーカーはありますか?

リファレンスになったのは、CBS・ソニーのスタジオのメインスピーカー(自社製)ですね。あそこは、ケーブルから特製のものだったので、市販のスピーカーではなかったと思います。

 

 

当時のモニターヘッドホンの定番みたいなものってあったのでしょうか?

日本のスタジオのプロユースとしては、ある程度限られていたような感じですね。
モニターヘッドホンとしては、ASHIDAVOXか藤木電気がほとんどだったんではないかと思います。

 

 

 

これまで、CD900STはロングセラーとなっていますが、公表されていないバージョンアップとかはなかったんでしょうか?

一切ないですね。レコーディングの現場ですでに使われているものですので、音が変わってしまうと困っちゃいますよね。逆に、如何に維持するか、の方が大事ですね。もし変える、となると、相当な覚悟でやることになりそうですね笑

 

 

 

CD900STはバランス接続改造をされたり、ユーザー自身がアレンジを加えていることがしばしばあるヘッドホンなのですが、それに関してなにか思うことはありますか?

そうですね。オーディオとしては、使いやすい形に変えたり、好きな音に改造したりするのは楽しいからいいんじゃないかなって思います。オーディオでいうと、コンポーネントステレオを自己流で組み合わせたり、作ったりしますよね。デジタルになって、既製品をそのまま聴くだけになってしまうと、オーディオの楽しみが半分ぐらい減っちゃうような気がします。ヘッドホンには結構カスタマイズ要素があって、物の本によれば、ヘッドホンに穴を開けると音が変わるって紹介されていたり。それぞれの楽しみができていいと思います。


 

僕たち、イヤホン・ヘッドホン専門店のスタッフからすれば、伝説の人物です。このような貴重な機会を与えていただき誠にありがとうございます!とても気さくにお話しをしていただきました!これからもソニーのヘッドホンの進化は続きます!

 

以上!

はまちゃん(eear_hamachan)がご案内いたしましたー!

 

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