大先生です。

 

皆さん、『Orpheus』というヘッドホンシステムをご存知ですか?

SENNHEISERが1991年に発表した、『コストを度外視して究極に音が良いヘッドホンを作る』というコンセプトの元に誕生したもので、価格は当時にして約200万円

全世界で300台限定という希少価値の高さもあり、オーディオ史において半ば伝説的に存在するモデルです。

 

2015年11月。

そんな伝説の『Orpheus』に、まさかの後継機種が発表されました。

開発に10年の歳月をかけ、SENNHEISERのエキスパート達が完成させた新たなる伝説

それが今宵、ついに発売開始となったのです。

 

早速ご紹介致しましょう……。

 

はいドン!!

 

 

 

SENNHEISER

HE-1

 

…………ッ!!

 

閉口。もしくは開いた口が塞がらない

とにかく言葉を紡ぐ余裕がありません。

もはやこんな超弩級のヘッドホンが存在すること自体凄いですし、下手したら一生のうち一度でもお目にかかれればいいレベル……。

 

って、あれ?

 

 

 

 

このAK300大先生の私物のような……。

 

 

 

 

き、聴いてるー!!

 

 

 

そうなのです。

 

今回ゼンハイザージャパン様のご厚意により、なんと『HE-1』を試聴する場を設けて頂きました!

無類のSENNHEISER好きの大先生、感無量です。

 

 

そんなわけで色々聴きつつ、色々見せて頂いたのでご紹介して行きたいと思います。

 

 

 


 

 

まずは外観から。

ボディは大理石で出来ており、駆動中もひんやりとした手触り(触る必要無いけど)。

バックには各種接続用の入力端子が纏まっており、フロントはソース選択やボリューム(電源兼用)などのシンプルなレイアウトのみとなっています。

 

押し込むことで電源ボタンを兼ねたボリュームノブ。回し心地は限りなく滑らかで、シンプル故にこだわりの強さが伝わる

 

上部にはそれぞれヘッドホンの格納部と真空管が設置されており、起動することでそれぞれが変形するというギミック付き。

 

『SE 802』の文字とSENNHEISERロゴが記された真空管。ちなみにHE-1自体は、真空管とトランジスタのハイブリッドアンプ

 

 

ひたすらワクワクしますね。

 

 

 

 

また、オプションとしてリモコンが付属しています。

金属製でズッシリとした重みがあり、継ぎ目ひとつ無いという美しいフォルムは、もはや付属リモコンの範疇を超えた高級感がありました。

単体で購入すると25万円だそうです。爆笑しました。

 

 

 

 

ヘッドホンの形状は、往年のHDシリーズを思わせるこれまたシンプルなもの。

 

 

究極のハイエンド機たる風格を備えつつも、パッと見でSENNHEISERだとわかるのが素敵ですね。

 

 

 


 

 

皆さんは『聴こえなかった音が聴こえるようになる』という体験をしたことがありますか?

初めて高級クラスのイヤホン(ヘッドホン)を聴く時、そのような感想を持たれる方が多いです。

例えば解像度。例えば遮音性。あらゆる要素がグレードアップされる事により、楽曲に内包されていたのにも関わらず”気づいていなかった音“に気付かされるタイミングがあります。

僕はこれを、音質のグレードが上がる第一段階だと考えています。

では第二段階は何か?

 

それは、音が実在性を伴うこと

本当に良い音を聴くと、音を通じてその様子が浮かんできます。ベースの弦がどのように揺れているか。奏者がどのような指使いをしているか。ボーカリストがどのように唇を動かし、どのように呼吸を行い、どのように発声しているか。

ざっくり言うと『まるで目の前で演奏しているみたい!』という感じ(サラウンド的な意味でなく)。

もちろん好みもありますので、これが全ての方に対して言えることではないかもしれませんが、少なくとも僕は音の質、即ち『音質』という面ではそうだと思っています。

 

HE-1で聴いた数々の楽曲達は、まさしく見事な実在性を感じさせてくれました。そして、その範囲が途方もなく広い

音場が広いという意味ではありません。いや、もちろん音場もべらぼうに広いのですが、その中で生々しく聴こえる範囲がこれまた広いのです。

楽曲の中心となるボーカルの表現はもちろん、バックの遠く遠くで小さく鳴っているリズミカルなハイハットのチキッとした音さえ、しっかりとした質量感があり、かつその距離が明白。

ヘッドホンリスニングであることは明確な音ながら、上質なスピーカーで聴くそれに迫りうるスケール感を覚えました。

 

 

ひとしきり堪能したあと、一緒に来ていたりょう太さんと話しました。

 

『ブログを書いたら、フツオタとかでHE-1に関する質問が来ちゃうかもしれませんね。僕、答えられるかな』

『「○○の曲に合いますか?」なんて質問が来ても困るな。「合わない曲なんかあるわけないやろ! 600万円やぞ!」って思わず言ってしまいそう』

『ははは』

 

少しだけ笑った後、僕は言葉を失いました。

 

合わない曲なんかない。

 

そんなやり取りをしてようやく、10曲以上の様々なジャンルの楽曲を再生して、そのいずれにも違和感を抱かなかったことに気が付きました。

普通、どのヘッドホンにも得意なジャンルはあります。逆に言うと、比較的苦手なジャンルもあるということ。

『音場が広くて柔らかな響きが楽しめる分、デジタル系の音はやや苦手』とか、『カチッとしたキレのある音だが、余韻が少し物足りない』とか言った具合です。

 

しかしこの『HE-1』は、そんな常識を軽々と覆します。

オーケストラの壮大な響き、EDMの硬くスピード感のあるデジタルなサウンド、ヒーリング音楽の静寂の表現や一音一音の実在感。

その全てに違和感がなく、得手不得手すら感じず、目の前の傑物はただただ最高の音を鳴らしてくれていたのです。

万能を超えた全能。オールラウンダーという言葉すら生ぬるいような、純粋なる能力の高さが伝わってきました。

 

 

 

盛り上がりすぎてしまった感が否めないので、少し具体的な部分を評価します。

まず、開放型とは思えないほど低音域がしっかりしています。量感もあるし、ディテールもハッキリとしています。

コントラバスのようなボンと響く低音も、ガバのようなノイジーなキックも、見事な再現性で答えてくれます。

 

また、先述の通り音場が非常に広く、壮大なサウンドステージに心ゆくまで浸ることが出来ます。

広がりに対して大味な音になることもなく、分離も鮮明。音数の多い楽曲でも余すことなく鳴らし切る余裕が感じられます。

濃厚な余韻がリアルに伝わるふくよかなサウンドは、時間を忘れて聴き耽ってしまいそうなクオリティ。

それを促すかのように、少なくとも一時間ほど試聴した程度では聴き疲れしない耳当たりの良さも秀逸。

上質なソファとHE-1があれば、延々と音楽を聴いていられそうです。

 

 

 


 

以上、SENNHEISER HE-1のご紹介でした。

 

僕としても未曾有の体験であり、舞い上がってしまった節は否めませんが、それを差し引きしてもまた語り尽くせない魅力と凄みのあるヘッドホンです。

試聴時間を終えて帰る時の、切ない感情といったらありません。600万円という、同ジャンルとしては破格の値段ではありつつも、いつか欲しい、と胸に志が宿るような、そんな極上のひとときでした。またどこかで聴けたらいいな……。

 

 

こちらは現在SENNHEISERの直販のみとなっておりますので、e☆イヤホンでの展示・販売は今のところはありません。

ただ、各種オーディオイベントなどに出展されたこともございますので、どこかでそのサウンドを堪能できる機会があるかも。

型破りな価格ながら、欲しくなってしまうこと請け合い。皆様もぜひ、一度は聴いて頂きたいヘッドホンです。

 

 

 

お相手は大先生ことクドウでした。それではまた次回。